マゼラン級 タイタン / Magellan-class Titan

マゼラン級戦艦 ©バンダイナムコフィルムワークス

『機動戦士ガンダム』に登場するタイタン(Titan)は、地球連邦宇宙軍のマゼラン級宇宙戦艦の一隻であり、宇宙世紀0079年12月のソロモン攻略戦(チェンバロ作戦)において、ティアンム中将が座乗した第2連合艦隊の旗艦である。艦隊の司令部であると同時に、決戦兵器ソーラ・システムのコントロール艦でもあったこの艦は、二度の照射によって要塞ソロモンの防衛力を打ち砕き、連邦軍の勝利を確定させた。そして勝利が決したまさにその直後、ドズル・ザビのビグ・ザムが放った一撃によって、司令官とともに宇宙に散った。 劇中でオペレーターの台詞から固有の艦名が明かされた数少ない連邦艦であるという事実も、この艦がいかに物語の要所に置かれていたかを物語っている。

本稿では、タイタンという艦名を与えられたマゼラン級の設計思想と諸元の変遷から、ティアンム中将の旗艦としての位置づけ、チェンバロ作戦における戦術的役割、ビグ・ザムによる撃沈の経緯を順に辿る。そのうえで、なぜ勝者の旗艦が最後の最後で沈まなければならなかったのかを構造的に読み解き、媒体ごとの描写の違いと、後世に受け継がれた名の行方までを見ていきたい。


マゼラン級戦艦 ― 大艦巨砲主義の申し子

タイタンを語るには、まずその船体であるマゼラン級を知る必要がある。マゼラン級は、宇宙世紀0070年代の軍備増強計画のもとで一番艦マゼランを筆頭に就役した連邦軍の宇宙戦艦であり、主に佐官級・将官級の指揮官が座乗する艦隊旗艦・主力艦として配備された。なお、「マゼラン級」というクラス名そのものは、テレビ放送後の『モビルスーツバリエーション』の文字設定で定着したものである。

その設計思想は明快だった。艦首が細く艦尾に向かって膨らむ楔形の艦体は、正面からの砲撃戦で被弾を逸らす避弾経始を意識したもので、艦体の四面のうち三面を上甲板として扱い、それぞれに指揮所と砲塔を配置している。これにより、艦橋側と艦底側の双方に向けて上下360度の射界が確保された。マゼラン級とは、遮るもののない宇宙空間で敵を遠距離から捕捉し、長射程のビームと誘導兵器で接近される前に敵艦を葬り去る――そのためだけに最適化された、典型的な大艦巨砲主義の産物だったのである。

項目初期設定(劇場版『めぐりあい宇宙編』期の資料)現行設定(MS IGLOO・0083以降)
全長265m327m
全幅67.1m94.5m
全高80.2m88.0m
本体重量―41,000t
全備重量22,000t62,900t
推進機関―熱核ロケット×4基
主兵装連装メガ粒子砲×7基(前方2基を主砲、他5基を副砲と区別)連装メガ粒子砲×7基(全基を同等の主砲として扱う解釈)
補助兵装連装機銃、ミサイルランチャー多数対宙機銃、ミサイルランチャー

7基の連装メガ粒子砲塔は、艦首の上下、甲板中央、両舷、艦尾に分散配置されている。ジオン公国軍の平均的な艦艇と比べてもレーダーと火力の充実ぶりは外観から明らかで、純粋な砲戦能力においてマゼラン級を上回る艦はジオン側にも多くはなかった。

しかし、この艦が想定していた戦争は、一年戦争の開戦とともに消え去った。ジオン軍が大規模に散布したミノフスキー粒子はレーダーと誘導兵器を無力化し、マゼラン級の持ち味である遠距離戦を封じてしまう。一週間戦争とルウム戦役において、連邦宇宙艦隊はモビルスーツ(MS)の前にほぼ一方的な惨敗を喫した。こうしてマゼラン級は、本来の能力を発揮する機会を奪われたまま、「時代遅れの大艦巨砲主義」と「見かけ倒しの連邦軍」の象徴という不本意な烙印を押されることになる。

コラム|マゼラン級の数値は、なぜ資料ごとに違うのか
マゼラン級の全長には、265mと327mという大きく異なる二つの数値が存在する。前者は劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』期の資料(徳間書店のロマンアルバム)に見られる古い設定であり、全幅67.1m、全高80.2m、全備重量22,000tと、現在の設定よりひと回り小型だった。一方、OVA『MS IGLOO』や『0083』のマゼラン改などの後発作品では全長327mとされ、これが現在の標準的な数値となっている。興味深いのは砲塔の扱いで、テレビ版の設定画では前方2基と残り5基の大きさが明確に異なっていたにもかかわらず、プラモデルでは全砲塔が同じ大きさで表現され、後発の映像作品はむしろこちらの解釈を採用した。設定が「立体物」に引っ張られて更新されていく――ガンダムという作品群の設定史を象徴するような事例である。ちなみに『THE ORIGIN』は再びテレビ版に回帰し、大型の主砲2基と小型の副砲群という構成を採っている。


ティアンムの旗艦 ― 再建艦隊の「顔」として

タイタンの艦長席ではなく提督席に座っていたのが、地球連邦軍のティアンム中将である。フルネームは漫画『アウターガンダム』で「マクファティ・ティアンム」と設定され、一部のゲーム作品でもこの名が用いられている。

ティアンムの経歴は、そのまま連邦宇宙軍の敗北と再生の歴史と重なる。一年戦争の開戦直後、彼はコロニー落としを阻止すべく艦隊を率いて出撃し、ジオン軍と交戦した。だがMSの性能と機動力の前に艦隊は大損害を被り、コロニーのジャブロー直撃こそ回避したものの、その代償は大きかった。続くルウム戦役では予備戦力とともに後方に待機していたとされる。壊滅状態に陥った連邦宇宙艦隊を立て直すため、ティアンムは艦隊再建計画であるビンソン計画を立案し、その実現に尽力した。 この計画による戦力の回復が、のちのオデッサ作戦とジャブロー防衛戦を経た迅速な反攻へとつながっていく。

ビンソン計画によってマゼラン級はサラミス級とともに相当数が増産され、この時期に建造された艦には、ジムやボールを運用するための簡易的な艦載機能力が付与された。艦底部のバルジをMSのハンガーブロックに改造し、艦橋前部からボールを発進させる構造である。ただし、ソロモン攻略戦に参加した艦のうち、この構造が明確に確認できるのはワッケイン大佐のレナウンであり、タイタン自身がビンソン計画艦であったかどうかを示す明確な設定は見当たらない。

外観上のタイタンを特徴づけているのは、ブルーグレーの塗装である。ネームシップのマゼランとレナウンが緑一色で塗装されていたのに対し、タイタンは、アナンケ、フェーベ、ルザルといった艦とともにブルーグレーで描かれている。これらはいずれも艦隊旗艦クラスの艦であり、将官が座乗する艦の視覚的な「格」を感じさせる配色ではある。 もっとも、『THE ORIGIN』ではルウム戦役で沈む一般のマゼラン級もブルーグレーで描かれており、この色を旗艦専用の識別色と断定するだけの根拠はない。むしろ『THE ORIGIN』では、旗艦機能を持つ改良型に専用の識別塗装を施すという、より踏み込んだ設定が用意されている(後述)。

コラム|艦名「タイタン」を読む
連邦軍のマゼラン級には、天体の名を持つ艦が少なくない。タイタン(土星の衛星)をはじめ、アナンケ(木星の衛星)、フェーベ(土星の衛星)、ネレイド(海王星の衛星)、ヒペリオン(土星の衛星)――いずれも外惑星の衛星名であり、その多くは艦隊旗艦を務めた艦である。一方でマゼランやレナウンのように、航海者や歴史上の艦名に由来する艦も存在するため、これを公式の命名規則と呼ぶことはできない。それでも、土星最大の衛星の名を冠した艦が連邦宇宙軍最大の反攻作戦の旗艦を務めたという事実には、どこか収まりのよさがある。付け加えるなら、「タイタン」の語源であるギリシア神話の巨神族ティーターンは、のちに連邦軍内部に生まれるエリート部隊「ティターンズ」と同じ言葉である。一年戦争の勝利の象徴として沈んだ艦と、その勝利の果てに腐敗していく連邦の象徴となる部隊が、同じ神々の名を分け合っているのは、偶然とはいえ皮肉な符合と言えるだろう。


チェンバロ作戦 ― ソーラ・システムの管制艦

ジオン軍のジャブロー降下作戦を退けて宇宙へ進出した連邦軍は、宇宙要塞ルナツーに集結し、保有する13個艦隊から二つの連合艦隊を編成した。レビル将軍が直率する第1連合艦隊(第1・第4・第6・第7艦隊)と、ティアンム中将が指揮する第2連合艦隊(第2・第3・第5・第9・第11・第13艦隊)である。第1連合艦隊が予備としてグラナダ、ア・バオア・クー方面に備える一方、第2連合艦隊には宇宙における反攻作戦の第一弾、宇宙要塞ソロモンの攻略が託された。その旗艦がタイタンである。

ソロモンは要塞砲、衛星ミサイル、浮き砲台を全方位に張り巡らせた難攻不落の要塞だった。正攻法の困難を悟った連邦軍が用意した切り札が、ソーラ・システムである。無数のミラーで太陽光を一点に集め、巨大な光線束として照射するこの兵器によって防衛線に穴を開け、そこから全軍を突入させる――それがチェンバロ作戦の骨子だった。そしてタイタンは、艦隊を率いる司令部であると同時に、このソーラ・システムを統括するコントロール艦という二つの顔を持っていた。

作戦は、0079年12月24日から翌日にかけて展開された。その経過を、タイタンの役割とともに整理しておこう。

局面戦況タイタンと本隊の動き
陽動ワッケイン大佐のレナウンを旗艦とする第3艦隊が、サイド4残骸の陰から出現。パブリク戦闘艇がビーム撹乱幕を展開する本隊はサイド1残骸の背後に潜伏し、ソーラ・システムの展開を開始
MS戦第3艦隊とホワイトベース隊を含むMS部隊が、ドズルのMS部隊と大規模な乱戦に突入第3艦隊が敵を拘束している間に、ミラー400万枚の組み立てをほぼ完了
第一次照射光線束がソロモンの第6スペースゲートを粉砕し、繋留されていた艦隊を蒸発させるティアンムの照射命令により発射
艦隊戦グワジン級グワランを中核とするソロモン主力艦隊が突進し、ミラーの一部を破壊マゼラン・サラミス隊の砲撃戦で敵艦列を撃ち崩す
総攻撃防衛線に開いた穴から、連邦軍が要塞へ一斉突入「タイタンより各艦へ」の号令のもと、MS隊を発進させる
第二次照射ア・バオア・クー方面へ退こうとするソロモン残存艦隊を撃破ティアンムの指示により再照射
ビグ・ザム強襲ドズルのビグ・ザムが第2連合艦隊に突入タイタン撃沈、ティアンム戦死

この作戦の要は、第3艦隊の陽動にあった。ドズルは第3艦隊の艦艇数の少なさから囮の可能性を疑い、索敵機を飛ばして敵本隊を探し続けていた。だがミノフスキー粒子下の索敵は困難を極め、サイド4方面のMS戦が激化するにつれて、ドズルはこちらに戦力を集中せざるを得なくなる。ようやく本隊とソーラ・システムを発見した時には、長距離ビーム攻撃はあらかじめ敷設されていたビーム撹乱幕に打ち消され、衛星ミサイルはサイド1残骸に阻まれて届かなかった。ルウム戦役でミノフスキー粒子に翻弄された連邦軍が、今度は同じ「見えない戦場」を逆手に取り、ジオン軍の目を欺いたのである。

照射の瞬間、第6スペースゲートは繋留艦隊もろとも消滅した。照射は焦点をずらしながら要塞本体をえぐるように続けられ、ソロモンは要塞設備と守備部隊の双方に甚大な被害を受ける。辛くも照射を免れたグワランの艦隊が突進してきた際には、マゼラン級とサラミス級の砲撃戦がこれを撃破した。開戦以来、MSの前に一方的に沈められてきたマゼラン級が、その本来の土俵である艦隊砲撃戦で、ようやく真価を示した瞬間だった。

そして総攻撃が発令される。このとき艦隊に響いたオペレーターの台詞が、「タイタンより各艦へ」である。連邦軍の艦艇の大半が名もなき「やられ役」として沈んでいく『機動戦士ガンダム』において、艦名が台詞として明示された意味は小さくない。 それは視聴者に対して、この艦こそが戦場の中心であり、連邦軍の反撃そのものを体現する存在であることを告げる合図だった。

ソーラー・システムの攻撃を受ける宇宙要塞ソロモン ©バンダイナムコフィルムワークス

コラム|ソーラ・システムという「非MS兵器」 ソーラ・システムの本質は、軍艦でもMSでもない、きわめて単純な光学兵器である点にある。個々のミラーは戦闘能力を持たない薄い板にすぎず、兵器として成立させるのは、それらを精密に配置し、焦点を制御する管制能力だった。いわば、ソーラ・システムの「砲身」は400万枚のミラーであり、その「引き金」と「照準」がタイタンにあったことになる。MSという新しい兵器体系の前に敗れ続けた連邦軍が、最初の本格的な反攻作戦で頼ったのが、MSではなく「艦隊による巨大な光学兵器の運用」だったことは示唆的である。それは連邦軍がまだ、戦場の主役をMSに完全に明け渡してはいなかったことの表れでもあった。


ビグ・ザム強襲 ― 旗艦の撃沈

ソーラ・システムの照射と連邦軍MS部隊の侵入によって、ソロモンは指揮系統を寸断され、組織的な抵抗が不可能な状態に追い込まれた。ドズル・ザビは要塞の放棄を決断し、残存艦艇とMS隊に総退却を命じる。そして自らは、味方を逃がすための殿(しんがり)として、試作型の巨大モビルアーマー(MA)ビグ・ザムに乗り込んだ。

第二次照射によって撤退中の艦艇の大半が失われ、ジオン側の損失は目を覆うばかりのものとなっていた。だが、敗北が確定したそのタイミングこそが、ビグ・ザムの特攻を最も効果的なものにした。 要塞に肉迫していた第2連合艦隊は、勝利を目前にして密集した陣形のまま前進していたからである。

ビグ・ザムが備えていたIフィールド・ジェネレーターは、ビームを偏向させて無効化する防御装置だった(テレビ版の劇中では「磁界」、劇場版では「ビームバリア」と呼ばれている)。連邦艦隊は長距離からかなりの密度でメガ粒子ビームを集中させたが、その火線はことごとく機体の手前で逸らされていく。マゼラン級の最大の武器である艦砲が、ここではまったく意味をなさなかった。第2連合艦隊の中へ突入したビグ・ザムは縦横無尽に暴れ回り、メガ粒子砲を放ちながら連邦艦艇を次々と撃沈していく。

ソロモンを発振するビグ・ザム ©バンダイナムコフィルムワークス

ビームが通じないと見るや、ティアンムはただちにミサイル攻撃への切り替えを指示する。だが、その判断が実を結ぶ時間は残されていなかった。直後、旗艦タイタンがビグ・ザムの射程に捉えられたのである。大型メガ粒子砲の直撃を受けたタイタンは爆沈し、ティアンム中将は艦と運命をともにした。要塞の陥落を指揮した司令官が、陥落が決まった直後に、敗軍の将のただ一機の反撃によって命を落とす――チェンバロ作戦は、勝者の側に最も大きな喪失を刻んで終わろうとしていた。

旗艦を失った第2連合艦隊は壊乱状態に陥った。この局地的な逆転劇に終止符を打ったのは、救援に駆けつけた第3艦隊のMS隊である。ビグ・ザムを包囲して集中攻撃を加え、スレッガー・ロウ中尉の捨て身の突撃を経て、最後はアムロ・レイのガンダムがとどめを刺した。ビームを無効化する怪物的MAを倒したのが、艦隊の砲火ではなく、至近距離まで肉薄したMSであったという事実は、この戦いの結末をあまりにも象徴的なものにしている。

ソロモンは陥落し、連邦軍はこれを「コンペイトウ」と改名して次の作戦の足がかりとした。だが、その代償は大きかった。連邦軍はビグ・ザムの反撃を含めた損害によって、結果的に宇宙戦艦の半数を失ったとされる。MS隊も半数近くが撃墜され、序盤に強行任務を担ったパブリク戦闘艇は8割が帰還しなかった。ティアンム中将の戦死と損害の大きさから、第1・第2連合艦隊は解散され、全艦隊は星一号作戦に向けて3個の「大隊」へと再編されることになる。


なぜタイタンは沈んだのか

タイタンの撃沈は、不運な流れ弾による事故ではない。そこには、この艦が背負っていた役割そのものに起因する構造的な理由があった。

第一に、タイタンには、艦隊の指揮と戦略兵器の管制という、作戦の成否を左右する二つの機能が集約されていた。 第2連合艦隊の司令部であると同時に、ソーラ・システムのコントロール艦でもあったタイタンは、現代の用語で言えば典型的な「単一障害点(Single Point of Failure)」だった。この一隻を失うことは、艦隊の頭脳と、要塞を焼いた兵器の「引き金」を同時に失うことを意味する。実際、タイタン撃沈後の第2連合艦隊は壊乱状態に陥り、事態の収拾は旗艦の指揮系統の外にいた第3艦隊のMS隊に委ねられることになった。

第二に、マゼラン級という艦そのものが、ビグ・ザムのような新世代の兵器に対する答えを持っていなかった。 マゼラン級の防御の考え方は、敵を遠距離で撃破し、そもそも近づけないという一点に集約されている。そのための火力がIフィールドによって無効化され、しかも敵が艦隊のただ中に躍り込んできた時点で、この艦に打つ手はほとんど残されていなかった。ティアンムがミサイル攻撃への切り替えを命じたのは正しい判断だったが、遠距離での迎撃を前提とする艦にとって、その判断はあまりにも遅い段階でしか下せなかったのである。艦隊の砲撃戦ではグワラン艦隊を粉砕したマゼラン級が、ただ一機のMAには抗えなかった――この落差こそ、一年戦争が「艦隊決戦の時代」から「機動兵器の時代」へと移り変わる過渡期であったことを、何よりも雄弁に物語っている。

第三に、ビグ・ザムの出撃は、連邦軍が最も油断していた瞬間と重なっていた。 二度の照射によって大勢は決し、第2連合艦隊は要塞への突入と残敵の掃討に意識を向けていた。旗艦を後方に下げ、指揮機能を分散させるという判断を下すには、あまりにも勝利が目前にありすぎたのである。

コラム|ドズル・ザビの最後の一撃
ドズルのビグ・ザム出撃は、しばしば「武人の意地」による玉砕として語られる。だが戦術的に見れば、その一撃は驚くほど理にかなっていた。敗北が確定し、敵が勝利に浮き足立った瞬間に、ビームの効かない機体で敵艦隊の中枢へ飛び込む――それは、残された戦力で敵に最大の損害を与え、味方の撤退時間を稼ぐための、ほとんど唯一の選択肢だった。ドズルが意図的にタイタンを狙ったのか、それとも暴れ回る中で旗艦が射程に入ったのかは、劇中から断定することはできない。しかし結果として、ドズルは連邦軍の最高指揮官とソーラ・システムの管制艦を同時に葬り去った。勝敗そのものは覆せなかったが、ジオン軍の猛将は最後の最後で、連邦軍に最も痛い一撃を与えていったのである。


媒体ごとのタイタン ― テレビ版・劇場版・THE ORIGIN・小説版

タイタンの描かれ方は、作品によって大きく異なる。とりわけ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、テレビ版には存在しなかった一年戦争初期の活躍が描かれ、この艦の印象を大きく塗り替えた。

媒体タイタンの扱い主な特徴
テレビ版(第35・36話)・劇場版『めぐりあい宇宙編』ソロモン攻略戦の第2連合艦隊旗艦ソーラ・システムのコントロール艦としてチェンバロ作戦を指揮し、ビグ・ザムに撃沈される。「タイタンより各艦へ」の台詞で艦名が明かされる
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ルウム戦役時の第2艦隊旗艦マゼラン改級戦術指揮艦という独自の分類。ルウム戦役でジオン艦隊を圧倒し、ジオン本国の目前まで迫る
小説版『機動戦士ガンダム』(富野由悠季)登場しないソロモン攻略戦そのものが発生せず、ドズルはア・バオア・クー戦の途上で戦死する

『THE ORIGIN』のタイタンは、アナンケと同じ「マゼラン改級戦術指揮艦」に分類されている。これは通常のマゼラン級が甲板中央に備えるミサイルVLSを撤去して連装メガ粒子副砲を1基増設し、識別塗装を施した、旗艦機能を持つ改良型である。テレビ版では「旗艦を務めたマゼラン級の一隻」にすぎなかったタイタンが、ここでは艦隊指揮のために設計された専用艦へと格上げされているのだ。

その活躍も目覚ましい。ルウム戦役において、ティアンム中将の第2艦隊はレビル艦隊の先遣部隊としてドズル指揮下のジオン艦隊と交戦し、これを圧倒する。敗走したかに見えたジオン艦隊を追撃するうちにその姿を見失ったものの、艦隊はそのまま前進を続け、ついにジオン軍の総旗艦グレート・デギンを発見するに至った。ジオン本国まであと一歩という地点である。だがティアンムはここで艦隊を反転させる。本国の防衛戦力が未知数であったこと、グレート・デギンを沈めた場合の政治的影響、そして何より本隊であるレビル艦隊がジオン軍によって壊滅したことが、その判断の理由だった。ティアンムは勝利の目前で矛を収め、友軍の救援へと向かったのである。

また漫画版『THE ORIGIN』では、ティアンムの第2艦隊は連邦軍最強と称され、ジャブローへのコロニー落としを狙うブリティッシュ作戦の迎撃にあたった。コロニーの落下そのものは止められなかったが、その攻撃によってコロニーは分解し、ジャブローへの直撃は回避されている。『THE ORIGIN』のティアンムとタイタンは、連邦軍が開戦初頭の敗北のなかでもなお保っていた、艦隊戦力の実力と矜持を体現する存在として再構築されたと言えるだろう。

一方、富野由悠季による小説版では、物語の展開がアニメとはまったく異なる。連邦軍は宇宙での反攻の第一目標をソロモンではなく月のグラナダに定めて陥落させ、次いでソロモンを素通りしてア・バオア・クーへ向かう。ソロモンは戦場となることなく終戦を迎え、ドズルは連邦艦隊の背後を突こうとしてコレヒドール宙域で戦死する。ソロモン攻略戦が存在しない以上、タイタンの出番もない。小説版に登場するマゼラン級として名が挙がるのは、レビル将軍の旗艦ドラッグやワッケイン大佐の座乗するハルといった別の艦である。

プラモデルの世界でも、タイタンは根強い人気を持つ題材である。旧キットのマゼランをベースに、旗艦らしさを演出する赤いラインや増設した砲塔、2本に増やしたアンテナなどを加えてタイタンを再現した有志の作例も見られる。公式設定に「タイタン専用」の差異がほとんど存在しないからこそ、モデラーはそれぞれの解釈で「ティアンムの旗艦」を形にしようとする。 名のある艦でありながら固有の設定が少ないという余白が、タイタンを創作の題材として生き続けさせているのである。


名を継ぐもの ― 「アドミラル・ティアンム」とタイタンの遺産

タイタンは沈み、ティアンムも戦死した。しかし、その名は宇宙世紀の歴史から消えなかった。

漫画『機動戦士ガンダムF90』には、「アドミラル・ティアンム」と名付けられたラー・カイラム級戦艦が登場する。チェンバロ作戦の最高司令官であったティアンムの功績を讃えて命名された艦である。艦長はアントニン・ノヴォトニー大佐。当初は第13実験戦団の旗艦としてガンダムF90の試験運用を担い、のちに火星独立ジオン軍(オールズモビル)の掃討任務を受けて、第13独立機動艦隊の総旗艦として火星へ派遣された。

だがその最期は、先代の旗艦と奇妙に重なり合う。ボッシュ・ウェラー大尉の裏切りによって艦を制圧されたのち、クルーの手で奪還されたアドミラル・ティアンムは、ノヴォトニーが極秘裏に搭載していた核弾頭の使用を決意したまさにその瞬間、オリンポス・キャノンの直撃を受けて轟沈した。戦局を決する切り札を抱えた旗艦が、敵の巨大な火砲のただ一撃で沈む――ティアンムの名を継いだ艦は、奇しくもタイタンとよく似た最期を辿ったのである。

戦死した将官の名を新鋭戦艦に冠するという行為は、その人物が軍の歴史のなかでどのように記憶されているかを示すものでもある。一年戦争の勝利に最も大きく貢献した連邦軍人の一人でありながら、ア・バオア・クーでの決戦を見ることなく散ったティアンムの名は、数十年の時を経て、宇宙世紀0120年代の連邦軍の中にも確かに生きていた。


関連製品

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参考文献

一次情報

  • テレビアニメ『機動戦士ガンダム』(日本サンライズ、1979〜1980年)第35話「ソロモン攻略戦」、第36話「恐怖!機動ビグ・ザム」
  • 劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(松竹配給、1982年3月13日公開)
  • OVA・漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(安彦良和)
  • 漫画『機動戦士ガンダムF90』
  • 小説『機動戦士ガンダム』(富野由悠季)
  • マクファティ・ティアンム|機動戦士ガンダム|キャラクター|ガンダムチャンネル

二次情報

※二次情報は主にファン運営のWiki・百科事典サイトであり、記述には検証不十分な情報や執筆者独自の解釈が混在する可能性があります。本稿では複数の情報源で内容が一致した事項を優先的に採用し、裏付けの取れなかった記述(全長346.6mなどの諸元値、タイタン自体がビンソン計画による改修艦であったとする説、「将官名を艦名とするのは極めて異例」とする評価など)は採用を見送りました。第二次照射の目標については「撤退中の残存艦隊」とする資料と「ドズルが再編した部隊」とする資料があり、本稿では前者に拠っています。艦名の由来に関する考察およびドズルの戦術に関する評価は筆者の解釈です。

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