モビルスーツ開発の黎明期において、その原初的な存在として名を刻む機体がある。RX-75 ガンタンク――それは、地球連邦軍が「モビルスーツ」(以下、MS)という概念に初めて真正面から挑んだ成果であり、同時に「戦車とMSの融合」という異形の回答でもあった。
本記事では、ガンタンクの開発背景から機体構造、武装、劇中での運用実績に至るまでを詳細に考察し、その意義と役割、戦術的特性、後継機との関係性を深堀りする。
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開発背景と設計思想──MS黎明期の挑戦
RX計画とV作戦の中核としての位置づけ
ガンタンクは、地球連邦軍によるRX計画(のちのV作戦)に基づき開発された最初期の試作モビルスーツである。当初はRTX-44重戦車の発展型として構想され、MSとしては異色の存在だった。
この計画は、ジオン公国が実用化しつつあったザクをはじめとするMSに対抗すべく急ピッチで進められたが、連邦軍は極度の情報不足の中で開発を強いられていた。ジオンから入手した断片的な技術情報をもとに設計が進められた結果、MSの動力源となる熱核反応炉の安定化技術や、サーボモーター制御による二足歩行アルゴリズムなど、複雑で未検証な技術に頼る必要があった。
このような背景から、MSの代名詞でもある「二足歩行」機構は断念され、代替として安定性に優れたキャタピラ走行ユニットが採用された。これは旧来の戦車技術を発展的に取り込んだ選択であり、モビルスーツ開発の過渡期を象徴する機体となった。
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構造的特徴と設計理念──戦車からモビルスーツへの橋渡し
上半身と下半身の分離構造
ガンタンクの機体構造で注目すべきは、上半身と下半身が明確に機能分化されている点である。上半身には長砲身のキャノン砲とミサイル・ランチャーを搭載し、純粋な火力支援ユニットとして設計されている。
下半身は戦車型の無限軌道を備えた移動ユニットであり、従来の装軌式車両と比較しても優れた安定性と走破性を実現している。特に、三角形に配置された履帯構造と強力なショック・アブソーバーの併用は、砲撃時の反動を大幅に吸収するもので、宇宙開発や重機械工学の技術を応用した設計といえる。
また、腹部にはコア・ブロック・システムを採用しており、戦闘中の緊急脱出や機体の分離運用にも対応できる。このシステムはガンダムやガンキャノンにも共通する仕様であり、後の量産機にも影響を与えた。
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火力と装備──実弾兵器の極致
120mm低反動キャノン砲
両肩に装備された120mm低反動キャノン砲は、最大射程240〜260kmを誇る長距離砲であり、ビーム兵器が配備される前段階における信頼性の高い主力兵装であった。完全燃焼薬莢を採用することで連射性と軽量化を実現し、誘導兵器が機能しないミノフスキー粒子下でも高い精度を発揮した。
また、砲塔が左右で独立稼働することで、異なる標的への同時攻撃が可能となっており、固定砲台としての運用にも適していた。
ボップ・ミサイル・ランチャー
両腕に搭載された40mm4連装ボップ・ミサイル・ランチャーは、近距離〜中距離の散弾運用を可能とする補完的兵器である。最大120連射の能力を持ち、特に機体の砲塔が旋回しないという弱点をカバーする役割を果たした。
戦術的には、拠点防衛や側面援護、遮蔽物越しの制圧射撃といった多様な用途に適しており、固定武装ながら非常に柔軟性のある装備だった。
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劇中における実戦運用──戦場での変遷と貢献
地上戦での登場と評価
『機動戦士ガンダム』第3話「敵の補給艦を叩け!」にて、ガンタンクは初の実戦投入となる。カイ・シデン(操縦)とハヤト・コバヤシ(砲手)のコンビが、ルナツー付近でジオンの補給艦パプアを撃沈した。この戦果は、固定砲台的支援兵器の有効性を強く印象づけるものであった。
その後、第6話以降はリュウ・ホセイが操縦手となり、ハヤトとのコンビが定着する。彼らの運用によってガンタンクは前線支援において重要な役割を担い、地上戦での砲撃機としてのポテンシャルを示した。
激戦と限界、そして散り際
第17話では、アムロがガンダムではなくガンタンクを自発的に選択し、要塞攻略に出撃するという描写もある。これは、地形や戦術に応じてガンタンクの方が適していると判断されたことを示しており、機体の有用性が再評価された瞬間でもある。
第19話「ランバ・ラル特攻!」では右転輪を破壊されて行動不能となるが、上半身を固定砲台として残し、下半身を切り離してコア・ファイターとして出撃する運用が描かれる。第21話では、リュウ・ホセイが負傷した身でコア・ファイターに搭乗し、マゼラトップへ特攻し戦死するという劇的な展開が印象的である。
その後も、第25話「オデッサの激戦」や第32話「強行突破作戦」、第35話「ソロモン攻略戦」において前線に立ち続け、支援砲撃や迎撃に貢献。マーカー・クランによる「ガンタンクの損失により戦力が11%低下」という発言は、その価値を如実に物語っている。
そして最終話、第43話「脱出」では、ア・バオア・クー防衛の最中に下半身を破壊され、ついに放棄される。これはMS黎明期における火力支援型機体の終焉、すなわち、実弾兵器と固定火力主体の時代の幕引きを象徴している。
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後継機への系譜──ガンタンクIIの再定義
ガンタンクIIは、RX-75の設計思想を引き継ぎつつ、モビルスーツとしての特性を放棄した重戦車型支援兵器として再設計された。コア・ブロックを廃止し、操縦性と整備性の向上、そして量産性を意識した合理化が図られている。
この再定義により、ガンタンクが「MSとしての限界を持つ機体」であることが明らかとなった一方で、「戦場における火力支援という任務においては非常に高い完成度を誇る装備」であることも証明された。
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総括──異端にして原点の意義
RX-75 ガンタンクは、モビルスーツの歴史における技術実験機であると同時に、戦場における運用に耐えうる「完成された砲撃支援兵器」でもあった。
その異形のシルエット、戦車のような走行システム、実弾主義に基づいた火力装備は、後のMSたちとは一線を画する存在である。だが、その姿にこそ黎明期の技術的挑戦と、兵器としてのリアリズムが詰まっていた。
RX-75は決して派手ではなかった。しかし、それゆえにこそ、最前線の戦場で味方を支え、仲間を守る真の「兵士の相棒」としての価値を持ち続けたのである。
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