概要:幻の試作機から強襲戦用モビルスーツへ
AGX-04 ガーベラ・テトラは、アナハイム・エレクトロニクス社が開発した高性能モビルスーツ(MS)である。もともとは「ガンダム開発計画」に基づき設計された試作4号機「RX-78GP04G」をベースとしており、本来の役割は宇宙戦における高機動型ガンダムの運用実証にあった。しかしながら、政治的・軍事的な混乱を背景として同計画は中止され、試作機もまた実戦配備されることなく処分対象となった。
その後、アナハイム社内部において非公式な社内プロジェクトとして再設計・再構築が行われた結果、ジオン系の意匠と機能を取り入れた新型MSとして再誕。これがAGX-04 ガーベラ・テトラである。機体はデラーズ紛争においてシーマ・ガラハウ中佐の指揮下に譲渡され、コロニー落としの作戦時に実戦投入された。
![]() | BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) HGUC 機動戦士ガンダム0083 AGX-04 ガーベラ・テトラ 1/144スケール 色分け済みプラモデル 新品価格 |

ガンダム試作4号機(GP04G)からの転生
ガンダム開発計画とその頓挫
UC0081年に始動した「ガンダム開発計画」は、アナハイム・エレクトロニクス社が連邦軍より一括受注する形で開始された。RX-78の運用実績を基盤とし、各種局地戦への対応を視野に入れた多機能MSを実現するべく、複数の試作機が設計された。中でもGP04Gは宇宙戦闘に特化した高機動型であり、長距離侵攻・高速接近戦を主目的とした強襲兵器である。
しかしながら、デラーズ・フリートによる武装蜂起を契機としてガンダム開発計画は凍結。GP01とGP02Aは戦火の中で稼働したものの、GP03ステイメンおよびデンドロビウムの破損により、プロジェクト全体が大幅な見直しを迫られた。GP04Gもまた表舞台から姿を消すこととなる。
![]() | 新品価格 |

アナハイム・エレクトロニクスの「二枚舌」戦略と密約譲渡
地球連邦とジオン残党をまたぐ両属構造
AGX-04 ガーベラ・テトラは、アナハイム・エレクトロニクス社による企業的な政治取引の象徴でもある。アナハイム社は戦後、旧ジオン系の技術者を多数吸収することでMS開発の中核を担い、地球連邦軍の御用企業として急成長を遂げた。だがその裏では、連邦政府とジオン残党の双方に技術・装備を流通させるという、極めて危ういバランスの上に立つ二重構造を形成していた。
その象徴こそが、このガーベラ・テトラである。GP04Gとして連邦軍向けに開発された本機は、ガンダム開発計画の中止という政治判断により正式ルートでの実戦投入が不可能となった。だが、同機を廃棄とするには惜しいとの判断から、アナハイム社内部で「社内研究機」として扱いを変え、裏ルートでの転用が模索され始める。
シーマ艦隊との裏取引
ここで登場するのが、旧ジオン軍の艦隊を率いるシーマ・ガラハウである。デラーズ・フリートの中でも独自の行動原理を持ち、アナハイムと接触していたシーマ中佐は、自身の艦隊に対し戦力の増強を強く求めていた。アナハイム常務のロバート・オサリバンは、ガンダム試作4号機を偽装・改修した上で譲渡する密約を交わし、この政治的取引は密かに成立する。
この時点でのアナハイムの立ち位置はきわめて複雑である。連邦に対しては「試作機は解体した」と報告しながら、実際には機体フレームを転用し、新型機として再構築。その上で旧敵勢力であるジオン残党に供与するという行為は、まさに戦争ビジネスの真骨頂であり、軍需産業としてのアナハイムの非倫理性を象徴する行動であった。
政治的偽装と意匠の改修
このような背景から、ガーベラ・テトラは連邦由来の構造と技術を持ちながらも、外装や電子機器を徹底してジオン風に偽装される必要があった。特に目立つのは、頭部センサーのモノアイ化や、肩部スラスターの意匠変更である。これらは単なる外観変更ではなく、「この機体は最初からジオン系であった」という政治的プロパガンダの一環であり、敵味方の境界を越えた兵器流通の実態を物語っている。
この取引はまた、連邦とジオンの対立が名目化しつつあった0083年当時の「冷戦構造」をも反映している。アナハイムは連邦政府に従属しながらも、ジオン残党と密約を交わすことで、戦争という経済活動を持続可能なものとし、結果として自社の影響力を拡大していったのだった。
![]() | 新品価格 |

機体構造と技術的特異点
高機動性能と格闘戦能力を両立させた設計
ガーベラ・テトラの最大の特徴は、その機動性と格闘戦性能の高さにある。大型のスラスターを内蔵したショルダー・アーマー、バックパックに装備可能なシュツルム・ブースターにより、機体は瞬時に戦域へ突入し、近接戦に移行する能力を備えていた。これは当時のMSでは例を見ないほどの機動性であり、「先制攻撃→白兵戦」という強襲ドクトリンを具現化した機体と言える。
ジオン系意匠への改修とその意義
本機は本来ガンダム型であるにもかかわらず、出自を隠蔽するために意匠がジオン風に改修されている。機体にはモノアイ・システムが採用され、肩部・脚部装甲のシルエットもジオニック社系の機体に酷似している。実際、設計を担ったのは旧ジオニック社から移籍した技術者たちであり、彼らが得意とする推進機構・関節構造が全体の骨格に活かされている。
この改修には、単なる偽装を超えて、「敵勢力への技術供与」を避けるための策としての意図もあった。アナハイム・エレクトロニクスという企業体が地球連邦とジオン残党の間で二重に立ち回る中で、本機はまさに政治的工作と軍事技術の交差点に生まれたMSである。
![]() | 1/144 AGX-04 ガーベラテトラ (機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY) 新品価格 |

武装と装備の分析
主兵装:X-04 ビーム・マシンガン
試作型のビーム・マシンガンは、従来のビーム・ライフルとは異なり、連射性能を重視した設計となっている。Eパックは連邦軍規格のものが使用可能であり、補給効率も高い。高出力冷却系を搭載し、連射時には自動で放熱モードに移行するリミッターも装備されていた。これにより、実質的には機動力を活かした“ヒット・アンド・アウェイ”戦術が可能となる。
近接火力:腕部110mm機関砲
両腕部に内蔵された機関砲は、連邦製MSに搭載されているバルカン砲を遥かに凌駕する威力と連射速度を有しており、中距離戦でも主兵装に次ぐ重要な火力源となっている。
格闘装備:ビーム・サーベル
両大腿部に隠されたビーム・サーベルは、通常露出しておらず、必要時にのみ展開される。これは後年のMSにも応用される収納設計であり、GP03Sステイメンの流れを汲む発想である。実戦においては敵機に接近した際の奇襲性も高く、機体の隠密性を高める工夫となっている。
オプション装備:シュツルム・ブースターの意義
シュツルム・ブースターは、プロペラントタンクとバーニアスラスターを一体化した外部装備であり、作戦空域への迅速な進出を可能にする戦術装備である。ガーベラ・テトラはこれにより、長距離の単独侵攻を可能とする「単機戦略機」としての性格を帯びた。
この装備は通常のバックパックに加えて搭載可能であり、プロペラントの消費を抑えつつ初動加速を最大限に高める構造となっている。戦闘空域に到達後はパージする設計となっており、戦闘機動中の質量負担を最小限に抑えることができた。デラーズ紛争では実戦投入されなかったものの、本装備の設計思想は後のティターンズ系MSにも引き継がれていくことになる。
![]() | FW ガンダムアルティメットオペレーション プラス5 「 ガーベラ・テトラ 」 単品 新品価格 |

劇中での運用と最期
ガーベラ・テトラは、デラーズ紛争の最終局面においてシーマ・ガラハウ中佐の乗機として登場した。アナハイムとの密約により譲渡された本機は、紛争終結直前に行われたコロニー落とし阻止作戦において、アルビオン隊と交戦する。
コウ・ウラキの搭乗するガンダム試作3号機デンドロビウムとの一騎打ちでは、機動力と連射火力を活かして一時的にダメージを与えることに成功する。しかしながら、Iフィールドを喪失したGP03が強引に方向転換した結果、メガ・ビーム砲の砲身がガーベラ・テトラに突き刺さり、そのまま直撃を受ける形で爆散。シーマ中佐も戦死するという、悲劇的な最期を迎えた。
この戦闘において、ガーベラ・テトラの性能は決して劣っていたわけではない。むしろシーマの戦術判断と操縦技量によって、本機は充分にその性能を発揮していた。しかし、デンドロビウムの持つ圧倒的な火力と装備差には抗しきれず、MSの性能を超えた戦局の論理に飲まれることとなった。
AGX-04が残した技術的遺産
ガーベラ・テトラは、試作4号機GP04Gを起点とするテクノロジーの集合体であり、その高推進性・装甲設計・格闘戦特化構造は、後のグリプス戦役に投入された第二〜第三世代MS群においても技術的継承が見られる。
特に、可変式ショルダースラスター・ポッドとモノアイカメラシステムの高効率化、シュツルム・ブースターに代表される長距離侵攻支援装備などは、後世のMSにおいて形を変えて現れている。すなわち、本機はジオン系・連邦系の技術融合が生んだ一つの到達点であり、その存在意義は試作MSに留まらず、「技術転換期の象徴」として評価されるべきものである。
結語:企業の論理と戦争の狭間に生まれた機体
AGX-04 ガーベラ・テトラは、純然たる軍事的要請だけで生まれたモビルスーツではない。アナハイム・エレクトロニクスという超国家的企業体の企業論理、旧ジオン軍技術者の設計思想、地球連邦政府との政治的駆け引き、そしてシーマ・ガラハウという人物の立場と信念——あらゆる要素が複雑に交錯した末に生まれた「裏ガンダム」であった。
その性能は間違いなく当時の水準を超えており、MS技術の新しい道を示した存在であったが、劇中での運命はそれを象徴するかのように、報われることのない最期を迎えた。しかし、それゆえにこそ、この機体はファンや研究者にとって語り継がれるべき存在である。
![]() | HGUC 1/144 ガーベラ・テトラ(ロールアウトVer.) プラモデル(ホビーオンラインショップ限定) 中古価格 |
