【考察】ガンダムNT-1がアムロに届いた場合どうなっていたか?

考察/コラム

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する高性能MS「RX-78NT-1 ガンダムNT-1」は、ニュータイプ専用機としてアムロ・レイに届けられる予定であった。しかし、その計画はサイド6での戦闘により頓挫し、アムロの手に渡ることはなかった。では、仮にガンダムNT-1が無事アムロに届いていたならば、一年戦争の戦局はどのように変化しただろうか? 本稿ではその可能性を複数の観点から分析し、仮想の宇宙世紀史を再構築する。

ガンダムNT-1の戦闘能力

機体性能

ガンダムNT-1は、ニュータイプとして覚醒したアムロ・レイ専用機として再設計されたモビルスーツであり、RX-78-2ガンダムを凌駕する反応速度を実現していた。 出力はRX-78-2の約1.3倍に強化されており、スラスターの増設および大型化により、運動性能も飛躍的に向上している。

また、RX-78-2では応急処置的に導入されたマグネット・コーティングに対し、本機では設計段階から同技術が組み込まれており、パイロットの操作に対する極めて高い追従性を備えていた。

さらに、ビーム・ライフルやシールドといった主兵装の性能も向上しており、総合的な戦闘能力においてもRX-78-2を大きく上回るスペックを有していた。ニュータイプが搭乗した場合、本機は第3世代モビルスーツに匹敵する性能を発揮するとされ、とりわけアムロ・レイであれば、その潜在能力を最大限に引き出すことが可能であったと推測されている。

アムロ・レイ

サイド7で偶然にもRX-78-2ガンダムに搭乗することとなった少年アムロ・レイは、「赤い彗星」シャア・アズナブル、「青い巨星」ランバ・ラル、「黒い三連星」など、ジオン軍のエースパイロットたちとの激戦を繰り広げる中で、ニュータイプとしての資質を徐々に覚醒させていった。

一年戦争の終盤にかけて、アムロのニュータイプ能力は著しく拡大し、とりわけソロモン攻略戦では数々の顕著な戦果を挙げている。

高性能を誇るRX-78-2ガンダムであっても、急速に成長するアムロの感応能力には追従しきれず、操縦時に違和感を覚える場面もあった。これに対応するため、同機にはマグネット・コーティングが施され、反応速度の向上と操縦性の改善が図られた。

しかし、戦争末期にはゲルググやモビルアーマーといった高性能な敵機体が続々と登場しており、これらを相手に最後まで戦い抜くことができたのは、アムロの卓越した操縦技術と、ニュータイプとしての超人的な能力の賜物であったことは疑いない。

ホームページを作るなら ロリポップレンタルサーバー

一年戦争への影響

シャア・アズナブルとの決戦

一年戦争において、アムロ・レイは「赤い彗星」の異名を持つシャア・アズナブルと幾度となく交戦した。当初は、RX-78-2ガンダムに搭乗したばかりのアムロが、圧倒的な操縦技量を誇るシャアに追い詰められる場面も多かったが、ニュータイプとして覚醒して以降、両者の実力は急速に拮抗していく。

戦争終盤には、シャアが高性能機であるゲルググや、サイコミュ兵器を搭載したジオングを駆っていたにもかかわらず、アムロはこれを凌駕し、激戦の末に彼を追い詰めることに成功している。

ア・バオア・クーでの最終決戦では、マグネット・コーティングによって性能を強化されたRX-78-2を操るアムロと、MSN-02ジオングに搭乗したシャアが壮絶な一騎打ちを展開。両機ともに激戦の末に大破し、戦いはモビルスーツを降りたパイロット同士の白兵戦へと移行した。

しかし、もしこのときアムロが搭乗していたのがRX-78-2ではなく、専用設計のガンダムNT-1〈アレックス〉であったなら、戦局はまったく異なる結末を迎えていたかもしれない。

ガンダムNT-1はアムロのニュータイプ能力に完全に追従できる高い応答性と、飛躍的に向上した機動性能を備えており、ジオングの遠隔操作兵器(オールレンジ攻撃)すら無効化し、白兵戦に縺れ込むことなく短時間で決着がついていた可能性は高い。

場合によっては、シャアが脱出する間もなく戦死していた可能性すら考えられる。そうなれば、シャアの暗殺によって命を落としたキシリア・ザビは生き延び、アクシズに逃れたかもしれない。ひいては、宇宙世紀におけるその後の歴史――『機動戦士Ζガンダム』で描かれるティターンズとエゥーゴの抗争や、シャアの再登場を中心とした一連の流れ――は、まったく異なる様相を呈したであろう。

シャア・アズナブルという存在の有無が、宇宙世紀史にいかに大きな影響を及ぼしていたのか――その可能性を考察する上で、NT-1の存在がもたらしうる歴史改変のインパクトは極めて大きいと言える。

ホワイトベースの運命

アムロ・レイが所属するホワイトベースは、宇宙世紀0079年12月31日にア・バオア・クー攻略戦において撃沈された。乗員たちは白兵戦を経てア・バオア・クーから脱出し、味方艦に救助されたが、ホワイトベースはエンジン部への直撃により爆発・完全喪失している。

この戦闘の最中、ホワイトベース最大の戦力であるアムロのRX-78-2 ガンダムは、シャア・アズナブルのジオングと交戦中であった。アムロは激戦の末にシャアと相打ちに近い形で決着をつけるが、その間、ホワイトベースの防衛にまで手が回らず、結果として母艦の被弾を許すこととなった。

もしこのとき、アムロが高性能機であるRX-78NT-1〈アレックス〉に搭乗しており、ジオングとの戦闘により早期の決着をつけることができていれば、ホワイトベースは撃沈を免れた可能性がある。同機によって守られたホワイトベースは、戦争終結までの間、引き続き戦線で重要な役割を果たしていたかもしれない。

また、ニュータイプ部隊とも噂されたホワイトベースの健在は、地球連邦軍の士気を大いに高め、ジオン軍にとっては強大な脅威として認識されたであろう。その結果、戦闘は連邦軍に有利な状況で推移し、戦局にも少なからぬ影響を与えた可能性がある。

一年戦争後の影響

キシリア・ザビ生存のジオン軍

シャアがア・バオア・クーで戦死していた場合、彼によって実行されたキシリア・ザビの暗殺は実現しなかった。ザビ家最後の実権者としてのキシリアは、敗戦のジオン軍を掌握し、指導者としてアクシズへと退避した可能性が高い。

この場合、アクシズの政治的性格は大きく異なるものとなる。実際の歴史では、アクシズはマハラジャ・カーンの統治下にあり、その後ハマーン・カーンの権力掌握により反連邦武装勢力へと変質していった。しかし、キシリア主導であれば、アクシズはザビ家王政の亡命政権としてより古典的なジオン主義を保持し、より強固な体制を築いたかもしれない。

ティターンズ一強の独裁体制

宇宙世紀0087年、一年戦争後の混迷が続く地球圏において、地球連邦軍はアースノイド至上主義を掲げる強硬派組織「ティターンズ」が主流派として台頭していた。ティターンズは、スペースノイドに対して差別的かつ非人道的な政策や軍事行動を繰り返し、宇宙移民にとって深刻な脅威となっていた。

この暴走に対抗するため、地球連邦内部から結成されたのが反連邦組織「エゥーゴ(A.E.U.G.)」である。その中心的人物の一人が、かつてジオン公国のエースパイロットとして名を馳せたシャア・アズナブル、すなわちクワトロ・バジーナであった。特に、指導者ブレックス・フォーラを軟禁状態から救出したのは彼であり、この行動なくしてはエゥーゴの結束や政治的正当性の確立も困難であったと推察される。

さらに決定的だったのは、彼による「ダカール演説」である。この演説により、ティターンズの暴政が全地球圏に知られることとなり、連邦内部の世論も大きく傾いた。もしシャア・アズナブルがエゥーゴに参加していなかったとしたら、エゥーゴがティターンズに勝利することは難しかったであろうし、逆にティターンズによる軍事独裁が完成していた可能性も否定できない。

シャアという象徴的存在を欠いた場合、ティターンズへの対抗勢力が十分に育たなかったことは想像に難くない。そのような状況下では、ティターンズが地球連邦軍全体を掌握し、ジャミトフ・ハイマンまたはバスク・オムによる独裁体制がより急速に進行していた可能性が高い。彼らによるジオン残党の討伐作戦、さらにはスペースノイド全体への弾圧政策が苛烈さを増し、宇宙圏はかつてない緊張状態に陥っていたであろう。

その一方で、ジオン残党を束ねるキシリア・ザビ率いるアクシズ(後のネオ・ジオン)とは、対立が激化する可能性もある。キシリアはかつてのジオン公国の正統性を主張しつつ、ティターンズと利害が真っ向から衝突する立場にあったためである。

しかし興味深いのは、ティターンズの指導者ジャミトフ・ハイマンの真の意図である。彼の最終目的がアースノイドを含む人類全体の選別・粛清と、地球圏の完全な統制であったとすれば、必ずしもキシリアとの全面対決を選んだとは限らない。むしろ、政治的取引を通じてアクシズとの共存を図り、互いに地球圏の支配権を分有するというシナリオも想定しうる。

いずれにせよ、シャア・アズナブルという存在がもたらした政治的・軍事的均衡が失われた場合、人類はより長期にわたる抑圧と冷え込んだ時代を経験していた可能性がある。エゥーゴの勝利とその後の政治的変革は、ひとえにシャアの存在がもたらした歴史的影響の大きさを示している。

ロリポップ!

ガンダムNT-1がもたらした歴史的変革

もしガンダムNT-1がアムロ・レイの手に渡っていたならば、その驚異的な戦闘能力は歴史の大勢に決定的な影響を与えていたと考えられる。中でも、歴史上の重要人物であるシャア・アズナブルが戦死するという結果を招いていた可能性は極めて高く、その波紋は広範に及んだであろう。

たとえば、シャアが不在となれば、ザビ家を再興しようとするキシリア・ザビの生存が確保され、ジオン公国の支配体制がより長期にわたって維持された可能性がある。また、宇宙世紀0087年における地球至上主義勢力「ティターンズ」の支配が、より強固かつ長期化する事態も想定される。その結果、人類社会は抑圧と差別に覆われた暗黒の時代へと突入していたかもしれない。

こうした未来においては、コロニー落としのような非人道的な大量虐殺が再び繰り返され、スペースノイドの権利はさらに蹂躙されたであろう。そう考えると、ガンダムNT-1がアムロというニュータイプの手に届かなかったことは、皮肉にも人類史にとって幸運だったのかもしれない。

結びに、ガンダムNT-1の破壊という重大な任務に命を賭したジオン軍の若き兵士に、心より哀悼の意を捧げたい。

関連記事

タイトルとURLをコピーしました