サイコガンダムは『機動戦士Zガンダム』に搭乗するモビルアーマー(MA)であり、連邦軍の特殊部隊ティターンズに配備された機体である。全高40mを超える巨大な人型モビルスーツ(MS)へと変形可能な可変機能を備えている。最大の特徴は強化人間が操縦することを前提としたサイコミュ搭載機であることと言える。

画像引用元:HGUC 1/144 MRX-009 サイコガンダム ©バンダイ
諸元
- 型式番号:MRX-009
- 全高:40m(MA形態は全高30.2m、翼幅32.4m)
- 本体重量:214.1t
- 全備重量:388.6t
- 装甲材質:ガンダリウム合金
- 出力:33,600kW
- 推力:8,4000kg×2(ミノフスキー・クラフト併用)
- センサー有効範囲:10,200km
- 武装:3連装拡散メガ粒子砲、ビーム砲(指)×10、小型メガ・ビーム砲(東部)×2、シールド
- 搭乗者:フォウ・ムラサメ
開発経緯
地球連邦軍のニュータイプ研究所のひとつであるムラサメ研究所が開発した、9番目の試作機。
一年戦争後、ニュータイプが搭乗したモビルスーツ(MS)に関する調査団が結成され、アムロ・レイが搭乗したガンダムタイプにサイコミュを搭載する構想が検討されたことが、本機開発の起点とされる。機体の原型は、一年戦争終結後に立案された拠点防衛用モビルアーマー「モビルフォートレス」であるといわれる。
MRX-002「NT専用プロトタイプガンダム」を皮切りに開発が進められ、ティターンズから供与されたガンダムMk-IIをベースとするMRX-007「プロトタイプ・サイコガンダム」を経て、U.C.0087年6月に本機がロールアウトした。
強化人間に適合させるための調整を重ねた結果、サイコミュ・システムは大型化し、さらに脳波伝導フィールド形成のための変形機構やミノフスキー・クラフトを採用したことで、全高は40メートルにも達した。予算獲得のための名目上、大型化してもガンダムタイプの外観は維持されている。
また、設計思想には終戦後に地球連邦軍が接収したMSN-02「ジオング」のデータが継承されており、コックピットは頭部に設置され、サイコミュ・インターフェイス・アレイとして機能する構造となっている。頭部は分離して小型モビルアーマーとして運用することも可能である。
その巨体ゆえの運用上の難しさや、強化人間専用機であることによる汎用性の低さから量産化には至らず、グリプス戦役においては2機のみが確認されている。
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基本性能
火器管制および機体制御には、サイコミュによる統合制御方式が採用されている。これにより、パターンデータを登録することで外部からの遠隔操作も可能となっている。戦闘プログラムは専任パイロットであるフォウ・ムラサメ専用に調整されており、彼女の脳波特性に最適化された形で稼働する。
本機は分類上可変モビルアーマー(MA)に属し、「モビルフォートレス(MF)」と呼ばれるMA形態への変形が可能である。この形態は、巨体を飛行させるために搭載されたミノフスキー・クラフトを稼働させる目的で設計されたものである。
変形時には、腕部などに配置されたエネルギー・ユニットを再構成し、大腿部および下腿部には複数の粒子偏向機を並列配置する。同時に、ボディユニット内部のキューブ・グリッド・エミッターを外部に展開し、ミノフスキー粒子による立方格子構造(ミノフスキー・クラフト・フィールド)を生成する。これにより、本機は成層圏高度までの飛行が可能となる。
しかし、全高40メートルを超える本機はガルダ級大型輸送機であっても格納できないため、長距離移動の際にはモビルフォートレス形態で牽引される運用が基本となっている。
また、バックパックに内蔵された推進システムは極めて高出力であり、最大出力時にはミノフスキー・クラフトを併用せずとも短時間の飛行を実現できるほどの推力を発揮する。
試作機は2機が確認されており、1号機ではパイロットの感応波に過剰反応したサイコミュがコックピット制御を逸脱するという事故が発生した。この事例を受け、2号機では「サイコ・コントロール・システム」を実装し、専用のヘッドセットを用いた外部制御インターフェイスが追加された。これにより、サイコミュによる暴走リスクの低減と機体安定性の向上が図られている。
サイコミュの危険性
サイコガンダムに搭載されたサイコミュ・システムには、根本的な不安定性が残されていた。その制御機構は極めて高い感応度を有しており、パイロットの脳波に直接干渉することによって、機体の挙動がパイロットの精神状態に大きく依存する構造となっていた。このため、感情やストレスの変動によって制御信号が乱れ、機体が暴走する危険性を常に内包していた。
特に、強化人間の脳波特性に合わせてチューニングされたサイコミュは、ニュータイプ的反応を人工的に増幅するよう設計されており、パイロットを極限状態へと追い込む性質を持っていた。これにより、システムは一時的な能力向上を得る反面、精神崩壊や自我の喪失といった深刻な副作用を引き起こすことがあった。
この設計思想は、戦闘能力を最大限に引き出すことを目的としていたものの、結果として「人間を戦闘のための道具に変える装置」へと転化してしまった。すなわち、サイコガンダムは単なるモビルアーマーではなく、人間の精神を侵食して戦闘を強制する“悪魔のマシン”としての側面を持つに至ったのである。
その危険性は、フォウ・ムラサメの例にも見られるように、強化人間の人格崩壊や暴走事件として顕在化した。こうした問題は、ムラサメ研究所における倫理を欠いた実験体運用の象徴であり、後のティターンズ体制におけるニュータイプ研究が抱えた暗部を象徴している。
武装
3連装拡散メガ粒子砲
本機の腹部に搭載された主砲は、1門あたり4.8メガワットの出力を誇る。発射系はジェネレーターへ直結されており、高い瞬発威力を発揮する一方、コンデンサやバッファによる稼働保護システムが組み込まれているため、過負荷時の安全性も確保されている。
砲形式は拡散式であり、有効射程は限定されるものの、砲身の仰角・俯角および旋回角の調整によって攻撃到達範囲を広く取れる設計となっている。なお、本砲はモビルアーマー(MA)形態においても使
ビーム砲
本機は両手の指先に各5基、計10基のビーム砲を備えており、各砲の出力は約2.0メガワットに達する。装備構成や運用概念はMSN-02「ジオング」の仕様を踏襲しており、エネルギー供給は大容量CAP(コンデンサ蓄積)方式によって行われる。
各腕部にはこれらビーム砲専用のパワージェネレーターが内蔵され、指の可動域を活用することで広い射角を確保できる設計となっている。
指先発射という配置は近接格闘と連携した高頻度射撃を可能にするが、エネルギーCAP方式の特性上、充填サイクルおよび放熱制御が課題となると推定される。これにより、運用上はエネルギー配分や射撃タイミングの管理が要求されたと考えられる。
小型メガ・ビーム砲
頭部の額部に2門装備された小型メガ・ビーム砲。発射角度は頭部稼働と連動しており、機体姿勢に応じた限定的な照準変更が可能である。火力は主兵装に劣るが、近接防御および牽制射撃に使用されたと推定される。
可変MA形態(モビルフォートレス形態)時には、頭部全体が装甲カバーで覆われる構造となるため、本砲は使用不能となる。
シールド
ガンダリウム合金を含む複合材で構成され、実弾およびビーム攻撃の双方に対して高い耐久性を有する防御装備である。モビルフォートレス(MF)形態では上下二分割されて機体両側面に展開・装着され、ミノフスキー・クラフトの補助デバイスおよび安定翼として機能することで、飛行時の姿勢制御と気流安定化に寄与する。分割・展開機構は防御面だけでなく空力制御を兼ねる多機能設計となっている。
Iフィールド・ジェネレーター
Iフィールド・ジェネレーターは、ミノフスキー粒子を特殊な磁場により整流・制御し、メガ粒子の通過を阻害する防御用のエネルギーフィールドを形成する装置である。これにより、メガ粒子砲などのビーム兵器を物理的に遮断することが可能となる。
本装置の稼働には極めて高いエネルギー供給が必要であり、発生持続時間および防御範囲には一定の制約が存在する。また、形成されるフィールドは均一ではなく、投射角度や発生方向によって強度分布に偏りが生じるため、機体全周を完全に覆うものではない。特に側面や近接距離での多方向攻撃に対しては、フィールドの限界を超え損耗・破綻する場合があるとされる。
これらの特性は、Iフィールドが極めて高度な防御技術でありながら、同時にエネルギー効率や防御範囲のバランス設計において大きな技術的課題を抱えていたことを示している。
活動記録
ティターンズ所属のスードリ隊には、試作1号機が増援として配備された。専属パイロットは、地球連邦軍ニュータイプ研究機関の一つであるムラサメ研究所において強化処置を施されたフォウ・ムラサメである。ニューホンコン市街におけるカラバ掃討作戦に参加した際、サイコミュ・システムが暴走し、機体制御を失ったことで市街地に甚大な被害をもたらした。その後、カラバ所属艦アウドムラを攻撃中のティターンズ戦艦スードリに対し、サイコガンダム1号機は自ら特攻を敢行。両機体は衝突・爆散し、機体は完全に喪失した。
一方、試作2号機はキリマンジャロ基地防衛隊へ配備され、カラバ部隊との交戦において圧倒的な戦闘力を発揮した。引き続きフォウ・ムラサメが専属パイロットとして搭乗していたが、エゥーゴ所属のカミーユ・ビダンとの交戦中、彼を庇った際に頭部コックピットが損傷し、パイロットが死亡したことで機体は行動不能となる。
その後、2号機はティターンズの管理下で回収・解体され、サイコガンダムMk-IIの開発母体として転用されたとされている。
参考文献
- Wikipedia サイコガンダム
- 『機動戦士Zガンダム』 ©創通・サンライズ
- 『週刊 ガンダム・モビルスーツ・バイブル』第78号 デアゴスティーニ・ジャパン
- 『プロジェクトファイル Ζガンダム』SBクリエイティブ
- 『機動戦士Zガンダム メカニカル編』 KADOKAWA
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