RX-78-2 ガンダムは、地球連邦軍が「V作戦」に基づき開発した白兵戦用の試作型モビルスーツ(MS)である。RX-78シリーズの2号機として、設計主任テム・レイ技術大尉を中心に、連邦系の軍需企業によって共同開発された。革新的な技術の数々が惜しみなく投入されたこの機体は、一年戦争の戦局に重要な影響を与え、後世におけるMS開発の基礎を築いたといえる。

画像引用元:『RG ガンダム』©バンダイ
1. 開発背景
RX-78-2 ガンダムの当初の外観は、試作機であるRX-78-1と同様に銀と白を基調としたロールアウトカラーで塗装されていた。しかし、最終運用試験地として指定されたサイド7への移送前に、友軍識別性および遠距離視認性の向上を目的として、現在一般的に知られるトリコロール(白・青・赤・黄)仕様へと変更されている。この配色は、対MS戦闘が視認基準となる環境下での心理効果や識別性を考慮した意図的な設計とも解釈される。
本機の開発には、地球連邦軍直轄の技術部門に加え、複数の大手軍需企業が参加した。設計は軍事予算枠を超える特例措置下で進められ、既存兵器体系とは異なる対MS戦を見据えた新世代兵器として構想されたとされる。
搭載された技術は、ミノフスキー物理学の軍事応用を基盤としている。特に、フィールドモーターによる四肢駆動、ルナ・チタニウム合金(後のガンダリウムα系素材へ発展)の採用、ビームサーベルおよびビームライフルの実用化、大気圏突入時の耐熱保護処理などは、その象徴的成果である。なお、大気圏突入処理については、テレビ版と劇場版の間で描写が異なり、後者では冷却ガスによる耐熱フィールド展開として解釈される描写が採用されている。
これらの技術的集積により、RX-78-2は一年戦争期における技術的完成点とも呼べる存在となり、後続のRGM-79 ジムシリーズをはじめとした連邦系MS開発の基準機として位置づけられていくことになる。
2. 技術構成と性能
RX-78-2 ガンダムは、一年戦争期におけるMS技術の集大成ともいえる機体であり、後のグリプス戦役以降に標準化される諸機能を既に先取りして搭載していた点に特徴がある。その完成度は試作機という枠組みを超えており、本機が収集した運用データは量産型RGM-79 ジム開発の基盤となった。結果として、RX-78シリーズは地球連邦軍が一年戦争を制するうえで決定的な役割を担ったと評価されている。
2-1. コア・ブロック・システム
機体中枢には、ハービック社製のFF-X7 コア・ファイターを搭載し、戦闘機としての機能と脱出装置としての役割を兼任するコア・ブロック・システムを採用している。この構造により、パイロット生存率の向上に加え、戦域の流動性に応じた多面的運用が可能となった。この思想は後のRX-78系およびΖガンダム計画にも継承されることとなる。
2-2. 熱核反応炉
動力にはミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉「NC-3」を双発構成で搭載し、既存MSを大きく凌駕するエネルギー出力を達成した。特にザクIIと比較した場合、性能は約5倍の余裕があるとされ、この高出力がビームライフル・ビームサーベル・Iフィールド理論を応用した制御系の運用を可能としている。
2-3. 駆動・制御技術
関節部にはサムソニシム社製のフィールドモーターが採用され、従来の油圧制御方式に比べ高い応答性と柔軟な可動域を実現した。さらに、ニュータイプに対応した高度操縦環境を目指し、モスク・ハン博士によるマグネット・コーティング処理が施行されている。これにより、操縦入力とフィードバック制御の遅延が著しく低減し、パイロットの反応速度を機体運動へ即時反映することが可能となった。
2-4. 装甲・緩衝構造
機体装甲には、当時最高峰の軍用複合金属であるルナ・チタニウム合金(後のガンダリウムα系列素材)を採用。これにより耐弾性・耐衝撃性ともに従来機を大きく上回り、ザクマシンガン程度の実体弾火器では決定打となり得ない防御性能を備えた。内部フレームにはファーダゲール社製の高分子緩衝材が組み込まれ、衝撃吸収性およびコクピット保護性能を強化している。
3. 兵装
RX-78-2 ガンダムの兵装設計は、機体規模の火器体系を超えた「一撃制圧思想」を基礎としており、既存のモビルスーツを圧倒的火力で無力化することを目的に開発された。この設計思想は後のMS兵装体系に大きな影響を与え、宇宙世紀におけるビーム兵器標準化への転換点となった。
3-1. 60mmバルカン砲(TOTOカニンガム社製)
頭部に内蔵された三砲身式速射機関砲で、牽制・迎撃・ミサイル阻止などの近距離戦域に使用される。威力は限定的だが、反応弾幕形成による戦術的価値が高く、後続MSにも標準装備化された。
3-2. ビーム・ライフル(ブラッシュ社製)
出力1.9MW、最大射程20km級の高エネルギービーム兵器。性能は戦艦級ビーム砲に匹敵し、実体弾装甲を前提としたMS設計思想を根本から変革した。本兵装の実用化こそ、RX-78シリーズが持つ最大の技術的象徴とされる。
3-3. ビーム・サーベル
Iフィールド収束技術により形成される近接白兵用兵器。エネルギー形状可変性により、ビーム・ジャベリンへの変形機能を備える。以後の宇宙世紀MSにおける近接兵器の基準形式となった。
3-4. ハイパー・バズーカ(ブラッシュ社製)
口径380mmのロケット式無反動砲。対艦戦闘および高耐装甲目標への攻撃に用いられる。弾種の切替が可能であり、実体炸裂弾を前提とした旧世代兵器との互換運用に対応していた点は、開発思想の過渡期性を象徴する。
これらの装備は高い換装性を前提とした設計思想のもと構築されており、戦場環境・ミッション仕様・パイロット特性に応じて柔軟な兵装運用が可能であった。この特性は後の連邦系MS開発体系にも継承され、MS運用における装備モジュール化思想の始点として位置づけられている。
これらの武装は換装性を重視した設計であり、戦場の状況に応じた柔軟な兵装運用を可能にした。
4. 戦場における存在意義
ホワイトベース隊に配備されたRX-78-2 ガンダムは、アムロ・レイの操縦技量と相まって一年戦争において数多くの戦果を挙げた。その実戦データは逐次解析され、量産機であるRGM-79 ジムおよび次世代MS開発の技術的基盤となった。こうして構築された戦術体系と運用理念は、MS戦争期における地球連邦軍の優位確立に寄与し、後に「たった一機のMSが戦局を変えた」と評される象徴的存在へと昇華した。
RX-78-2は単なる試作兵器でも偶発的成果でもなく、地球連邦軍が国力と技術力を投じて生み出した採算度外視の実験機であり、ワンオフ戦略機として設計された。投入された革新的技術群――ビーム兵装、ルナ・チタニウム合金、フィールドモーター、マグネット・コーティングなど――はいずれも後の量産体系へ影響を与え、MS兵器史における標準化の起点となった。
また、RX-78-2は軍事的価値に加え、戦略的・心理的効果を併せ持つ存在であった。戦場における連邦軍の技術優位性を象徴する「ガンダム」という名称は、やがて兵器分類以上の意味を持ち、軍事ブランドとして流通した。これは敵対勢力への威圧のみならず、連邦軍内の士気向上や軍事プロパガンダにおいても重要な役割を果たしたと推察される。
このように、RX-78-2 ガンダムは技術史・戦略思想・象徴性の三領域において基準点となる存在である。MS開発黎明期における到達点であると同時に、その後の宇宙世紀MS体系において参照され続ける「祖型(Prototype Archetype)」として位置づけられるべき機体である。
5. 雑学
- ・アムロ・レイは撃墜スコアの8割以上をRX-78-2で挙げている。
6. 参考資料
- データガンダム キャラクター列伝 [宇宙世紀編Ⅰ] ㈱角川書店 岡崎昭行・著
7. 関連製品
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