ホワイトベースは、地球連邦軍が初めて実戦投入したモビルスーツ(MS)運用能力を有する戦艦であり、その革新性は宇宙世紀の軍艦設計において画期的な転換点となった。本稿では、SCV-70 ホワイトベースの技術的特徴、建造経緯、艦級分類に関する議論、兵装の詳細について検討し、その戦略的意義と後続艦への影響を総合的に解説する。
ホワイトベースの艦級と艦籍番号
ペガサス級としての系譜
ホワイトベースは一般に「ペガサス級強襲揚陸艦」の2番艦とされるが、一部資料では「ホワイトベース級」の1番艦とする記述も存在する。この艦級分類の混乱は、1番艦であるはずのペガサス(SCV-69)の建造遅延に起因する。エンジン設計に重大な問題を抱えたペガサスの就役が後回しとなり、ホワイトベースが先行して竣工したため、実質的に同型艦の先駆けとして認識される場合も多い。
艦籍番号の変遷と背景
一般的には「SCV-70」の艦籍番号が知られているが、『機動戦士ガンダム MSV(モビルスーツバリエーション)』では「LMSD-71」と記載されることもある。これは、「宇宙攻撃空母」や「MS搭載強襲揚陸艦」といった異なる分類基準による識別番号の違いであり、ホワイトベースの多機能性を象徴するエピソードとも言える。
建造経緯とV作戦との関係
起工から改修、就役までの流れ
ホワイトベースは、地球連邦軍のSCV(宇宙空母)開発計画の一環としてジャブローAブロック1号ドックで建造が開始された。当初はFF-S3 セイバーフィッシュ航宙戦闘機の搭載を前提とした通常の宇宙空母であったが、宇宙世紀0079年初頭に勃発した戦争における連邦軍劣勢を受け、V作戦が発動される。
この作戦により、同艦はMSの運用を主眼とした強襲揚陸艦へと改修され、同年4月に大規模な設計変更が実施された。以下はその主要なマイルストーンである。
- 0078年2月:起工
- 0079年4月:MS運用機能を追加するための改修
- 0079年7月:進宙
- 0079年9月1日:竣工および実戦配備
技術的特性と革新性
ミノフスキー・クラフト搭載艦としての意義
ホワイトベースは、当時としては非常に先進的な「ミノフスキー・クラフト・システム」を搭載しており、重力下でも反重力浮遊による航行が可能だった。この技術により、大気圏内での飛行と静止が可能となり、従来の艦船が行えなかった戦術展開を実現した。
大気圏突入・離脱能力
大気圏の突入・離脱能力を有する点も特筆すべきであり、追加装備を必要とせず単艦でこれを可能とした。ただし、この機能は後続艦には継承されず、ホワイトベース特有の仕様として残された。
艦載機とMS運用機能
モビルスーツ運用艦としての設計
ホワイトベースは、V作戦に基づく「コア・ブロック・システム」搭載MS──RX-78 ガンダム、RX-77 ガンキャノン、RX-75 ガンタンク──の運用を前提として艦内構造が設計された。特に、左右両舷に設けられたリニアカタパルトは、迅速な発進を実現するための中核的機構であり、後のアーガマ級にも継承されていく。
モジュール構造と多用途性
ホワイトベースの設計は、艦体・推進機関・航空機運用ブロックが明確に分割されたモジュール構造を採用しており、これにより修理性や改修の柔軟性が向上していた。また、艦体の一部は切り離し可能であり、緊急時の分離や機能限定運用も可能とされる。
搭載兵装と戦闘力の実態
主砲とビーム兵器の構成
ホワイトベースは大型の連装砲を前部に1基(2門)装備しており、実体弾による砲撃を行う。この主砲は最大で口径58cm〜88cm、弾頭重量は2トン、地上射程は最大72kmにも及ぶとされる。一方で、反動が大きく、発射時には他の砲塔の同時使用が制限されるという欠点もあった。
また、ビーム兵器として偏向型連装メガ粒子砲×2基(計4門)を装備しており、ジャブローにてウッディ・マルデン大尉の指揮のもと、宇宙戦向けに換装されている。
副砲・防御兵装の詳細と戦闘スタイル
副砲と対空防御兵器
ホワイトベースには、主砲とメガ粒子砲のほかにも、複数の連装機関砲(CIWS)やミサイルランチャーが装備されていたとされる。これらは主に対空・対MS戦を想定した近距離迎撃兵装であり、艦の防御を補完する存在であった。
なお、資料によっては艦上のビーム砲塔や実体弾砲の配置数に違いがあるため、以下は代表的な構成の一例である:
- 偏向型連装メガ粒子砲 ×2基(艦体左右)
- 大型連装主砲 ×1基(艦首)
- 連装機関砲(CIWS) ×4〜6門(艦橋・甲板周辺)
実戦での運用例
一年戦争中、ホワイトベースは宇宙・大気圏内・地上のいずれにおいても運用された。特にジャブロー降下作戦時や、ソロモン・ア・バオア・クー戦などにおける多方向からの攻撃に対しては、艦砲射撃とMS隊による迎撃を連携させた戦術で成果を上げている。
搭載数・乗員・搭載MSの構成変遷
乗員とMS搭載能力
ホワイトベースの定数乗員数は約80〜100名とされており、これは同時代の宇宙艦艇としては中規模クラスに該当する。MSは通常3〜5機の運用を前提としていたが、実戦では臨時の運用や整備不足により変動が生じている。
搭載モビルスーツ(代表例)
- RX-78-2 ガンダム
- RX-77-2 ガンキャノン(最大2機)
- RX-75-4 ガンタンク
- コア・ファイター/コア・ブースター
コア・ファイターはMSのコア・ブロックとしてだけでなく、偵察機・連絡機としても機能し、戦術的柔軟性を高めていた。
戦略的価値と後続艦への影響
試験艦としての役割
ホワイトベースは、実戦配備艦であると同時に、地球連邦軍におけるMS運用ドクトリン確立のための試験艦としても運用されていた。その運用データは、のちに建造されるアーガマ級、ラー・カイラム級、ネェル・アーガマなどのMS運用戦艦の設計指針に直結していく。
後続艦への技術継承
ホワイトベースの成功により、以下の技術が後続艦に標準装備化される。
- MS用リニアカタパルト
- 艦内格納整備ドック
- 艦首型艦橋レイアウト(戦闘中の視界確保)
- モジュール構造による整備性の向上
ただし、ミノフスキー・クラフトや大気圏離脱機能はコスト面や運用面の制約から標準装備とはならず、限定的な採用に留まった。
総合的評価と歴史的意義
ホワイトベースは、「モビルスーツを中核とする新たな艦隊運用思想」を宇宙世紀に確立した、きわめて先進的な戦艦であった。艦そのものの戦闘力よりも、MSの戦術的有効性を実証する運用母艦としての役割こそが、最大の意義と評価される。
また、民間人や士官候補生を含む臨時クルーでありながら、正規艦隊以上の戦果を挙げた運用実績は、「ニュータイプ理論」と並ぶ宇宙世紀軍事史の転換点としても注目される。
おわりに
SCV-70 ホワイトベースは、その設計・運用・影響のいずれにおいても、地球連邦軍および宇宙世紀全体の軍事技術史における金字塔である。単なる戦艦ではなく、MS運用という概念を現実の戦力へと昇華させた先導艦として、その存在意義は未来永劫語り継がれるべきであろう。
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