サイド7 ─ 未完成の理想郷と戦乱の幕開け

技術/設定

サイド7とは何か──L3宙域に築かれた未完の理想郷

サイド7(通称:ノア)は、宇宙世紀シリーズに登場する架空のスペースコロニー群である。その位置は地球から見て月とは正反対側、ラグランジュポイント3(L3)付近に設定されており、連邦軍の宇宙要塞ルナツーに隣接する。宇宙世紀0079年の時点で最も新しいコロニー群であり、一年戦争勃発の2年前から建設が進められていた。

しかし、開戦に先立つ時点でも全体は未完成であり、定住可能なコロニーはごくわずかであった。中でも「1バンチコロニー」とされるユニットは、開戦初期にジオン公国軍の奇襲を受け、戦火の発端となった歴史を持つ。


宇宙世紀0079──一年戦争の導火線となったサイド7

サイド7の中核をなす「グリーン・ノア1」は、地球連邦が極秘裏に開発していた新型モビルスーツ(RXシリーズ)の試験運用を行う基地機能を有していた。連邦はこの地でRX-78 ガンダムをはじめとするV作戦を進行させていたが、ジオン公国軍のエースパイロット、シャア・アズナブル率いる偵察部隊がこれを察知。0079年9月、潜入と同時に急襲を実行する。

この奇襲により、アムロ・レイが偶然にもガンダムに搭乗。人類史上初のモビルスーツ同士による本格的戦闘がサイド7で勃発した。この事件は後に「サイド7の戦闘」として記録されることとなり、ホワイトベースとアムロの戦いが始まる契機となった。

戦闘によりコロニーは深刻な被害を受け、民間人はホワイトベースに避難し、コロニー自体は放棄される。未完の都市はわずか数日のうちに戦乱の象徴と化したのである。


グリーン・ノア1の再建──『Ζガンダム』時代の舞台へ

宇宙世紀0086年、放棄されていたグリーン・ノア1は再建される。カミーユ・ビダンやファ・ユイリィが居住する一般市民向けコロニーとしての機能を取り戻し、一時的にではあるが安定した社会生活の場となった。

しかし、その表面下では再び新たな戦争の火種がくすぶっていた。地球連邦軍内に創設された武装組織「ティターンズ」が、このコロニーでガンダムMK-Ⅱの試作運用を行っていたのである。

この事実を掴んだ反連邦組織「エゥーゴ」は、カミーユ・ビダンを巻き込みながらMK-Ⅱの強奪を成功させ、再びコロニーは戦乱の舞台となる。カミーユの行動は、その後のグリプス戦役における反抗の象徴となり、歴史の奔流を大きく動かすきっかけとなった。


グリーン・ノア2とグリプス──巨大軍事施設の実態

グリーン・ノア2は、サイド7内でも異例の構造を持つコロニーである。通常の密閉型コロニー二基を連結した構造で、ティターンズの軍事拠点および工業基地として利用された。

この施設は、地球上のキャリフォルニアベースに匹敵、あるいは凌駕する生産力を有していたとされる。バスク・オム大佐の命により、このコロニーには「グリプス」というコードネームが与えられた。

エゥーゴのクワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)はこの施設に潜入し、「空気が臭い」と形容するほど深刻な大気汚染を確認している。コロニーでありながらも軍需工場として酷使され、環境維持機能を度外視した運用が行われていたことを示す描写である。


グリプス1・グリプス2への分割とコロニーレーザー化

グリプス戦役が激化する中で、グリーン・ノア2は「グリプス1」と「グリプス2」に分割される。うち「グリプス2」はティターンズによって巨大レーザー砲──いわゆるコロニーレーザーへと改造された。

この兵器は、かつてのソーラ・レイを凌駕する威力を持ち、戦局を一変させる戦略兵器として運用された。コロニーを兵器として転用する発想は、スペースノイドの生活圏を戦争の道具とする非人道的行為であり、ティターンズの暴政を象徴するものである。


宇宙世紀の終焉におけるサイド7の運命

グリプス戦役の終結以降、サイド7は再び疲弊する。宇宙世紀0150年代以降、ザンスカール戦争をはじめとする度重なる宇宙戦乱の中で、再建は後回しとされ、人員や物資は他のサイドへ優先的に配分された。

最終的に、サイド7の多くのコロニー建設計画は凍結され、残されたユニット群も自給自足すら困難な状態に陥る。宇宙世紀0163年には、その中核たる「グリプス2」がルナツー近傍に移送され、旧宙域には廃墟のみが残された。

廃墟となったコロニーには一部不法居住者が存在していたとされるが、サイド7としての自治機能は完全に喪失していた。この未完のサイドは、戦乱の火種と化し、宇宙世紀の興亡を象徴する存在となったのである。


結語──理想と現実の狭間に消えた都市

サイド7とは、宇宙移民政策の理想を体現する最先端のコロニーであった。しかし、時代はその理想を許さなかった。戦争の火種として焼き尽くされ、軍事施設へと転用され、ついには廃墟へと帰したその過程は、宇宙世紀の興亡と人類の愚かさを映し出す縮図とも言える。

理想郷として設計された空間が、最も戦乱に翻弄されたという皮肉。その歴史を振り返ることは、単にガンダム作品を読み解く行為ではなく、人類の未来への教訓を学ぶ行為でもある。


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