宇宙世紀:Universal Centuryその名称の背景

技術/設定

宇宙世紀(Universal Century)は『ガンダムシリーズ』の舞台となる架空の未来における紀年法である。数あるガンダムシリーズにおいて『宇宙世紀シリーズ』と呼ばれる作品群を形成しており、最初の作品『機動戦士ガンダム』以降、脈々と系譜を連ねている。

この記事では宇宙世紀がなぜそのように呼ばれているのか、宇宙世紀命名の背景について考察して深堀していく。

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宇宙世紀という名の意味

呼称

宇宙世紀は「世紀」と称しているものの、100年単位の呼称では無く、実際には年をカウントする「歴」である。スペースコロニーへの移民が開始された年を0001年として、常にゼロを含む4桁で表記される。英文表記ではUniversal Centuryから「U.C.」と略されて使用される。

『機動戦士ガンダム』の舞台は宇宙移民から既に79年が経過した宇宙世紀0079年(U.C.0079)であり、公式設定では『G-SAVIOUR』の宇宙世紀0223年までが描かれている。

名称の意味

「宇宙世紀」は直訳すると宇宙(Space)+世紀(Century)と訳されるものの、英語ではUniversal Centuryと表記される。「宇宙=Universal」とされており、これは「Universal」が「全体的な、包括的な、普遍的な」という意味を持ち、単なる宇宙ではなく「人類全体が共有する時代」の意味を含ませているとも解釈できる。

宇宙世紀001年1月1日の改暦セレモニーを描写している『機動戦士ガンダムUC』において、地球連邦政府初代首相リカルド・マーセナスの演説に下記のようなものがある。

宇宙世紀UC。ユニバーサル・センチュリー。字義通りに訳せば「普遍的世紀」ということになります。宇宙時代の世界であるなら、ユニバース・センチュリーとするべきでしたが、我々は敢えて用法違いと思われる「普遍的ユニバーサル」を選び、新しい世紀の名前としました。

(中略)

人類はひとつになれるという事実を普遍化し、互いを拒絶することなく、憎しみ争うことなく、一個の種として広大な宇宙と向き合ってゆく。ユニバーサル・センチュリーという言葉には、そんな我々の祈りが込められています。

「宇宙世紀」という名称の背景には、人類がひとつとなって宇宙という広大なフロンティアと未来に向かっていくという願いが込められていたのだ。

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理想と現実

新人類(ニュータイプ)に託した思い

宇宙世紀元年に制定されたオリジナルの「宇宙世紀憲章」には、人類が新たな段階に進むこと、後に「ニュータイプ」と呼ばれる可能性についての言及がある。

第十五条 二項

将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させることとする。

この条文は劇中では未来への「祈り」として語られており、何かしらの根拠があったものでは無いが、人類が地球の重力から解き放たれ、宇宙という新たなフロンティアで共存・進化していく理想を願って付け加えられたと考えられる。

時代を経て、「ニュータイプ」と呼ばれる少数の事例は確認されたものの、「宇宙に適応した新人類」として扱われることはなかった。彼らはお互いを誤解なく分かり合える共感力を有したものの、種としての進化を示すには至らず、人類が繰り返し起こす戦争という歴史に埋もれていくのであった。

戦争に彩られた歴史

宇宙世紀憲章の理想とは裏腹に、宇宙世紀の歴史は戦争の歴史といっても過言ではなかった。

特権階級が残った地球では連邦政府が権力を独占したことで、宇宙移民(スペースノイド)には自治権や参政権が与えられなかった。結果として、独立自治を願ったジオン公国による一年戦争に繋がり、コロニー落としといった未曾有の大虐殺まで引き起こしてしまった。一年戦争後も大小様々な争いが起こり、その度に多くの人が犠牲となっていった。

人類の可能性でもある「ニュータイプ」の定義は「優れた兵士としての才能」と矮小化され、戦争に利用されると共にその多くが悲劇的な運命を辿った。更には、ニュータイプの戦闘能力だけに着目した軍組織は、投薬や催眠で人為的にそれらを引き出した「強化人間」といいう非人道的な存在すら生みだしてしまう。

宇宙世紀とは、人類が理想を掲げながらも、その理想を自ら裏切り続けた歴史といってもいいのかもしれない。

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宇宙世紀の終焉

次の世紀へ

『ガンダム Gのレコンギスタ』では、宇宙世紀以降の時代として「リギルドセンチュリー(Regild Century:R.C.)」が登場する。宇宙世紀の終了とともにリギルドセンチュリーへの改元が行われたとされており、宇宙世紀との直接の繋がりが示唆されている。作中の舞台はR.C.1014年であるが、宇宙世紀を含めて2000年の歴史があるとされている為、宇宙世紀は約1000年続いたとも考えられる。

リギルドセンチュリー以前の歴史において、技術を発展させすぎた人類は滅亡の危機に陥ったとされている。その反省を踏まえ、リギルドセンチュリーにおいては技術発展が抑制されており、特に宇宙世紀時代の技術の研究は宗教的なタブーとして忌避されている。

更に人類の歴史は最終的に『∀ガンダム』の舞台である「正歴(Correct Century:C.C.)」に辿り着く。正暦はガンダムシリーズの全ての歴史の果てにあるとされている。舞台設定においては、かつて人類は幾度にもわたる戦争を繰り返し、地球環境に壊滅的な打撃を与えた後、最終的には∀ガンダムの月光蝶システムで文明が葬り去れたとされている。その為、正歴の文明は19世紀前後の産業革命前の生活水準まで後退している。

宇宙世紀が示すもの

宇宙世紀は、表面上こそ人類の宇宙進出と社会的進化の時代とされながらも、実際には戦争と暴力、そして抑圧と搾取が繰り返された血塗られた歴史であった。スペースノイドの自治要求が武力で封じ込められ、コロニー落としのような大量殺戮が敢行され、さらには強化人間といった倫理を逸脱した人体実験までが繰り返し行われた。

このような歴史の積み重ねは、やがて「宇宙世紀の終焉」すなわち人類文明の衰退と断絶の兆しとして現れ、後世の歴史観においては「黒歴史」という名のもとに語り継がれることとなった。そこに映し出されているのは、科学技術と人間の進化が、道徳や政治的成熟を伴わないまま暴走した結果であるとも言えるだろう。

しかし、その暗黒の歴史の中にあっても、絶望に抗い、希望を捨てなかった者たちの存在が確かにあった。時代に翻弄されながらも理不尽に対して抗い続けた人々の意志は、たとえ戦乱の中に散っていったとしても、決して無意味なものではなかった。

彼らが示した「人は変われる」という信念や、「理解しあう」という可能性への希求こそが、宇宙世紀という混沌の歴史における唯一にして最大の希望であったとも言える。暴力の連鎖の中に垣間見える一筋の光明──それが、宇宙世紀を単なる終末の物語ではなく、未来へとつながる希望として魅力的に映し出すのかもしれない。

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参考文献

  • Wikipedia
  • 『機動戦士ガンダムUC』 映像作品および小説
  • 『∀ガンダム』 テレビアニメ
  • 『ガンダム Gのレコンギスタ』 テレビアニメ
  • 『機動戦士ガンダム・記録全集1』日本サンライズ

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