ア・バオア・クー / A Baoa Qu

画像引用元:『機動戦士ガンダム』 ©バンダイナムコフィルムワークス

『機動戦士ガンダム』に登場するア・バオア・クー(A Baoa Qu)は、ジオン公国軍が地球圏のラグランジュ点L2に築いた宇宙要塞であり、ソロモン、月面のグラナダとともにジオン本土を守る防衛ラインの最後の要だった。円盤状と円錐状の二つの小惑星を接いだ「傘」のような岩塊は、宇宙世紀0079年12月31日、一年戦争最後の決戦の舞台となり、ザビ家の指導者たちとともに陥落した。 戦後は地球連邦により摂取され、後にティターンズにより「ゼダンの門」と名を変え、0088年、小惑星アクシズの激突によって二つに割れて生涯を終えている。

膨大な数のモビルスーツ(MS)、二隻の超大型空母、そして自前の工廠を抱えたこの要塞は、数字の上では難攻不落に近かった。それでも陥ちたのはなぜか。本稿では、インドの塔に棲む怪物から借りたその名前の由来に始まり、構造と防衛システム、星一号作戦の十二時間、外伝作品が描いたもう一つの戦場、そしてゼダンの門としての最期までを辿る。そのうえで、この要塞が外からの砲火ではなく、内側から崩れた城だったことを確かめてみたい。


勝利の塔の怪物 ― 名前の由来

ア・バオア・クーという奇妙な響きの名は、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスがマルガリータ・ゲレロと共編した『幻獣辞典』に収められた幻獣「ア・バオ・ア・クゥー(Á Bao A Qu)」に由来するとされる。命名者は明らかになっていないが、この説は公式寄りの資料でも一般的なものとして紹介されている。

ボルヘスが記す伝承の舞台は、インド・ラージャスターン地方のチトールにそびえる「勝利の塔」である。塔の頂上からは世界で最も美しい景色が見えるとされ、その最下段の階段に、ア・バオ・ア・クゥーは眠っている。人が階段を登り始めると目を覚まし、登る者の踵に寄り添うようについていく。一段ごとに体は色を帯び、形をはっきりさせ、青い光を放ち始める。だが、この怪物が頂上で完全な姿に到達できるのは、登る者が涅槃に達した完全な人間であるときだけだ。そうでなければ怪物は途中で力を失い、絹ずれのような呻き声を上げながら最下段へ転がり落ち、次の登攀者を待ち続ける。

コラム|出典そのものが「幻獣」だった
ボルヘスはこの伝承の出典として、当初リチャード・フランシス・バートンによる『千夜一夜物語』の注釈を挙げていた。ところが英訳版では、出典が「C・C・イトゥルブル」なる人物のマレー呪術に関する論考へと差し替えられている。そしてこの論考は、実在が確認されていない(ボルヘスの友人C・C・イトゥルブルの名を借りたものとする見方もある)。インドの塔の伝説が、実在の確認できない書物を経由して語られているわけである。英語圏の資料が「マレーの伝説」、日本語圏の資料が「インドの伝説」と由来を書き分けているのは、このためだ。ボルヘスの作品には虚構の文献を本物らしく引用する手法がしばしば見られ、この幻獣もまた、その系譜に連なる存在と考えられる。

この伝承を要塞の名前に重ねると、示唆的な読み方ができる。勝利の塔を登る者についていきながら、ほとんど頂上へは届かない怪物(伝承では、永い生のなかで頂上に達したのはただ一度だけとされる)。ア・バオア・クーを最後の砦として勝利を目指したギレン・ザビも、その兄を撃って指揮を引き継いだキシリア・ザビも、そして8年後にこの岩塊を「門」と呼び替えたティターンズも、誰一人として頂上には辿り着けなかった。名前が付けられた時点でそこまで意図されていたかは分からない。だが、この要塞の歴史は、まるで伝承をなぞるように、頂上を目指した者たちの転落の連続として刻まれていく。

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傘のかたちをした岩塊 ― 構造と立地

ア・バオア・クーは、もともとルナツーやソロモンと同じく、スペース・コロニー建設の資源として小惑星帯から運ばれてきた鉱物資源衛星である。それが地球・月系のラグランジュ点L2に定着させられ、ジオン公国の手で軍事要塞へと改造された。開戦後の0079年6月に要塞化が完了し、これによってソロモン、グラナダとを結ぶ本土防衛ラインが完成している。

図1 地球圏のラグランジュ点とジオン公国の本土防衛ライン(筆者作成・模式図)

位置関係を見ると、この要塞の役割がよく分かる。ジオン本国のサイド3は、月の裏側にあたるL2に置かれている。ア・バオア・クーはそのサイド3の目の前、地球側から本国へ至る経路を塞ぐ位置にあった。L5のソロモンが地球方面への前線拠点、月面のグラナダが月方面の拠点とすれば、ア・バオア・クーは本国の「玄関」に据えられた最終防衛線だったのである。ソロモンが陥ちたとき、本国までの間に残っていた大規模な拠点はここだけだった。

二つの小惑星をつないだ要塞

要塞の最大の特徴は、その形にある。上部の円盤状の小惑星と、下部の円錐状の小惑星を接合した構造で、その外観から「傘」とも呼ばれた。全高約33.75km、直径約22.5kmとする数値が知られる巨体である(この数値は、かつてお台場のガンダムフロント東京に展示された大型ジオラマ〔高さ約4.5m・幅約3m〕を1/7500スケールとして換算したものとされる。ただし同ジオラマを1/3000スケールと報じた国内記事もあり、公式設定として確定した数値ではない)。円盤部の頂上にはセントラル・タワーが建てられ、そこから要塞全体の戦闘を指揮した。

図2 ア・バオア・クーの構造(筆者作成・模式図)

この構造は、要塞に二つの性格を与えている。

一つは弱点である。二つの岩塊をつないだ中央の接合部は、構造的に最も脆い部分だった。同時に、宇宙空間に向けて突き出したセントラル・タワーは、要塞の頭脳でありながら外部に露出している。巨大な岩盤の奥深くに司令部を埋め込むことができなかったのには、後述する理由がある。

もう一つは守りの工夫である。接合部は弱点であると同時に、要塞の上下から火線を集中させやすい場所でもあった。一年戦争の最終決戦では、この接合部の前後を固めるように二隻の超大型空母が配置されることになる。弱点を承知のうえで、そこを最大の戦力で埋めるという発想である。

資源を抱えた要塞

ソロモンとの決定的な違いは、内部の資源にある。ソロモンは資源を掘り尽くして放棄されていた小惑星を要塞化したものだが、ア・バオア・クーはルナツーと同様、内部に多くの資源を残した状態のまま改造に着手された。

この違いは、要塞の性格を大きく分けた。空洞の多いソロモンでは岩盤の内部を自由に使えたのに対し、ア・バオア・クーは中央に二つの岩塊の接合部を抱え、しかも岩盤には資源が詰まっていた。要塞の中心部に司令部を設けにくかったことが、セントラル・タワーを頂上に突き出させた理由と考えられる(資料の見方と筆者の推測を含む)。一方で、資源を掘りながら兵器を作れるという利点は大きかった。大戦末期には次期主力MS用の生産ラインが組まれ、ゲルググはここで量産されている。ア・バオア・クーは「守る要塞」であると同時に、自ら資源を掘り出して兵器を生み出す「工場」でもあった。

項目ソロモンア・バオア・クー
位置L5(地球方面の前線)L2(サイド3の目前)
元の小惑星資源を掘り尽くした後に放棄資源を多数残したまま改造
形状単一の小惑星円盤状+円錐状の二つを接合(「傘」)
司令部岩盤内部頂上のセントラル・タワー(外部に露出)
工業機能前線拠点・補給基地資源採掘と兵器生産(ゲルググ量産)
陥落0079年12月24〜25日(チェンバロ作戦)0079年12月31日(星一号作戦)
戦後連邦軍拠点「コンペイ島」ティターンズ拠点「ゼダンの門」
図3 ソロモンとア・バオア・クー ― 二つの要塞の設計思想(筆者作成)

ソロモンについては、別稿「ソロモン / Solomon」で詳しく論じている。

コラム|重さ12兆トンの岩塊 ― ア・バオア・クーを物理学で測る

全高約33.75km、直径約22.5kmという数値を仮に前提として、現実の天体と比べてみよう。実は、ほぼ同じ大きさの小惑星が実在する。NASAの探査機NEARシューメーカーが2000〜2001年に周回・着陸した地球近傍小惑星エロス(433 Eros)で、その大きさは約34.4×11.2×11.2kmである。長さだけならア・バオア・クーとほぼ同じだが、エロスが細長いピーナッツ形であるのに対し、ア・バオア・クーは太い傘の形をしており、体積ではおおむね2倍近い。エロスの質量は約6.7×10¹⁵kg、平均密度は約2.67g/cm³と測定されている。

要塞の外形を、底面の半径11.25km、高さ33.75kmの円錐で大づかみに近似すると、体積は約4,500km³になる。岩石の密度をエロスと同程度の約2.7g/cm³とすれば、質量は約1.2×10¹⁶kg(1京2,000兆kg)、トンに直せば約12兆トンである。同じ体積の球に置き換えた半径は約10kmで、ここから表面重力を計算すると約0.008m/s²、地球の約1,300分の1にしかならない。脱出速度は秒速およそ12〜13mで、陸上の短距離選手が全力で走る速さとほぼ変わらない。実測されたエロスの赤道表面重力(約0.006m/s²)や脱出速度(秒速約10m)と比べても、ほぼ同じ水準である。

つまり、ア・バオア・クーの表面では、MSが軽く地面を蹴るだけで要塞の重力圏から飛び出せる。これは要塞にとって、MSや艦艇を素早く発進させられるという利点である一方、自らの重力で形を保つことがほとんどできない天体だということも意味している。二つの岩塊をつなぎとめているのは重力ではなく、岩盤の強度と人工の構造物だった。この事実は、のちに要塞の最期を考えるうえで重要な意味を持つ。

図4 ア・バオア・クーの大きさ ― 小惑星エロス、富士山との比較(筆者作成・設定値と公開データに基づく概算)

4つのフィールド ― 防衛システムと兵力配置

ア・バオア・クーの防衛システムは、他の宇宙要塞とは異なる独特のものだった。要塞の周囲の防空管制空域は、太陽の方向を南(S)とした東西南北の四つの「フィールド」に区分され、それぞれに兵力が展開されていた。さらに要塞の死角となる区域には、多数のMSやモビルアーマー(MA)を搭載できるドロス級大型空母が配置された。

図5 ア・バオア・クーの四フィールド防衛体制(筆者作成・模式図)
フィールド臨む方向主な配備戦力役割
Nフィールドジオン本国(サイド3)空母ドロスの部隊。最多の兵力本国への最終関門。主戦場
Sフィールド地球空母ドロワの部隊。ソロモンからの撤退部隊、デラーズ大佐の総帥親衛隊など要塞の「正面」
Eフィールド月の裏側(グラナダ方面)カスペン戦闘大隊(ヨーツンヘイム)少数の部隊が担当。撤退ルートを兼ねる
Wフィールド―わずかな艦艇とする資料が多い(グワジン級戦艦1隻のみとする展示資料がある一方、ムサイ級・チベ級やMAビグロを配備したとする英語圏資料もある)手薄な空域とされる

二隻の空母の配置には、明確な意図が読み取れる。ドロス級の一番艦ドロスはNフィールドに、二番艦ドロワはSフィールドに置かれ、ちょうど要塞の接続部の前後を固める布陣となっていた。ドロワはもともとソロモンの防衛に就いていた艦で、同要塞の陥落時に残存戦力とともにア・バオア・クーへ撤退してきたものである。ギレンは、連邦軍の主攻勢がサイド3方向と地球方向から来ると読み、二隻の空母という「動く要塞」を要塞本体の弱点に重ねることで、防衛線に厚みを持たせたのである。一方で、EとWのフィールドは少数の部隊に任され、戦力の濃淡ははっきりしていた。

最新鋭機と学徒兵

数字の上で、ア・バオア・クーの防衛体制は強力だった。最新鋭のゲルググ、リック・ドム、ザクII、MAビグロ。そして無尽蔵ともいえるMSの補給・発進能力を持つ二隻の大型空母。だが、その中身には大きな問題があった。

ソロモンの陥落と地上からの撤退で、ジオン軍はすでに熟練パイロットの多くを失っていた。その穴を埋めるため、多数の学徒動員兵が間に合わせの操縦訓練だけで実戦に投入された。ビーム兵器を標準装備した最新鋭機ゲルググに、戦場を知らない学生が乗るというミスマッチが各所で生じたのである。要人警護を想定した親衛隊仕様のゲルググL(ランツィーラー)についても、ベテラン兵士の機種転換が間に合わず、学徒兵が搭乗したといわれている(ゲーム『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』で追加された設定)。

高性能なジオン製MSに対して、連邦軍は物量と人的資源で応戦した。
画像引用元:『機動戦士ガンダム』 ©バンダイナムコフィルムワークス

対する地球連邦軍の主力MSは、ジムとボールだった。機体性能ではゲルググに及ばない。だが、その兵士の多くはホワイトベースを筆頭にここまでの戦いを生き延びてきた歴戦の兵だった。ジオンが持っていたのは「最新鋭の機体」であり、連邦が持っていたのは「戦い方を知る兵士」だった。 一年戦争の最終決戦は、ハードウェアとソフトウェアのどちらが勝敗を決めるのかを問う戦いでもあった。両国の国力と人的資源の差については、「一年戦争におけるジオン公国と地球連邦の国力差」も参照されたい。


星一号作戦前夜 ― ソーラ・レイとレビルの死

宇宙世紀0079年12月24日、地球連邦軍はチェンバロ作戦によってソロモンを攻略し、これを「コンペイ島」と改称して自軍の拠点とした。続いて連邦軍は、ジオン本国への侵攻作戦「星一号作戦」の準備に入る。

ソロモン戦での艦隊の損害は大きく、レビル将軍率いる連邦軍司令部は残存艦隊を大幅に再編し、全艦艇とMS/MA隊を三個の「大隊」に分けた。一方のジオン軍は、強行偵察を繰り返して連邦軍の次の目標がア・バオア・クー方面であることを突き止めていた。総帥ギレン・ザビは、密閉型コロニーを改造したコロニーレーザー「ソーラ・レイ」による決戦を望んで、父デギン・ソド・ザビ公王に発射の許可を求める。だが、息子ガルマとドズルを相次いで失い、すでに厭戦的になっていたデギンは、ギレンへの不信を深め、独自に和平の道を探り始めた。

図6 星一号作戦 ― ソーラ・レイ照射とア・バオア・クーへの進撃(筆者作成・模式図)

12月29日、デギンは座乗艦グレート・デギンで、進軍中の連邦軍第1大隊との接触に向かい、レビルはその受け入れを命じた。翌30日(年表では21時05分とされる)、グレート・デギンがレビルの艦に接舷し、両者が会談の席に着こうとしたその時、デギンの動きを察知していたギレンは、すでに充填を終えていたソーラ・レイの発射を命じる。光に呑み込まれた第1大隊の大半は瞬時に蒸発し、デギンとレビルは同時に命を落とした。連邦軍はこの一撃で艦隊戦力のおよそ三割を失い、輸送していた決戦兵器ソーラ・システムも消滅した。

最高指揮官と主力の大部分を、交戦前に失う。普通なら作戦の中止を考える状況である。だが連邦軍は、星一号作戦の続行を選んだ。ソーラ・レイのエネルギー再充填には一週間を要するとみられ、それまでに決着をつけるしかなかったからである。ギレンの放った一撃は、連邦軍を止めるのではなく、むしろ「一週間以内に要塞を陥とす」という期限を与えて決戦へ追い立てた。

ソーラ・レイで大打撃を受けたとはいえ、ジオン側もソロモンの敗北で宇宙艦隊の大半を失っており、兵力では連邦軍が依然として有利だったとする見方が強い。ただし、攻撃側には防御側のおよそ3倍の兵力が必要とする「攻者三倍」の経験則(その実証性には異論もある)に照らせば、要塞攻めに臨む連邦軍の戦力は決して万全ではなかった。

囮の大艦隊と、本命の少数精鋭

連邦軍が選んだ作戦は、陽動だった。健在だった第2大隊と第3大隊(劇場版では第4大隊)を合わせた艦隊集団をNフィールドへ向かわせる。一方、壊滅した第1大隊の残存艦艇は、戦艦ルザルを旗艦とする小型艦隊に再編し、練度の高いMS部隊を集中配備してSフィールドへ向かわせた。ホワイトベース隊も、この第1大隊に属していた。

物量を誇る艦隊を本命に見せかけ、実際には質に勝るMS部隊を要塞突入の本命とする。そこには、一年戦争を通じて連邦・ジオンの双方が学んだ「大艦巨砲主義に対するMS主兵論の優越」という教訓が反映されていた。Eフィールドにも別動隊が送られ、その戦力比は連邦6に対してジオン1だったとされる。


十二時間の攻防 ― 12月31日の戦闘経過

0079年12月31日、一年戦争最後の一日が始まる。戦闘の経過を、時刻を追って見ていこう。

図7 ア・バオア・クー攻防戦タイムライン(筆者作成・TV版/劇場版の通説に基づく)

0時00分、連邦軍司令部は、Nフィールドに向かう第2・第3大隊と、Sフィールドに向かう第1大隊に、総攻撃に向けた再集結と戦闘態勢を取るよう伝達した。

1時17分、要塞内ではギレンによる出陣演説が行われ、全将兵の士気が高められた。演説を終えたギレンは、要塞の中央指令室に移って全軍の指揮を執る。5時00分、連邦軍の各大隊は再集結を終えた。

8時10分、Nフィールドの連邦軍艦隊による大規模なビーム攻撃で戦端が開かれる。連邦側は、ソロモン戦と同様にパブリク突撃艇を発進させてビーム撹乱幕を敷設し、要塞のビーム砲火を封じようとした。これを見たギレンは、対空砲火をビームからミサイルに切り替えさせる。さらに敵の主攻勢をNフィールドと見定め、Sフィールドの兵力の半数をNフィールドの増援に回した。同じ頃、グラナダから来援したキシリアが直属の艦艇とともに入港し、その戦力もNフィールドに配置された。

8時40分、Nフィールドのミサイル砲撃戦はジオン側が優勢となり、最前線のマゼラン級戦艦を沈められた連邦軍はMS部隊を発進させる。ギレンは空母ドロスの前進を命じ、MS部隊を一挙に投入した。戦闘は激しさを増したが、ここでもジオン側が優位に立ち、ギレンは自軍の優勢を確信するほどの余裕を見せていた。

同じ頃、Sフィールドには連邦軍のルザル艦隊が侵入し、迎撃のMS部隊が繰り出された。その中には、シャア・アズナブルの乗る新型MSジオングの姿もあった。Sフィールドでは、ホワイトベース隊のガンダムとジオングが激突し、ニュータイプ同士の戦いが繰り広げられる。Eフィールドでは、少数のカスペン戦闘大隊が奮戦し、MAビグ・ラングの投入によって連邦軍を一時撤退に追い込んだ。

ここまで、戦況は明らかにジオン有利に推移していた。 防衛システムは設計どおりに機能し、Nフィールドの空母ドロスは連邦艦隊を押し返していた。要塞が陥ちる理由は、まだどこにも見当たらなかったのである。

9時25分 ― 中央指令室の銃声

転機は、要塞の外ではなく内側で訪れた。

戦闘の合間にギレンと面会していたキシリアは、父デギンの死がソーラ・レイの発射によるものだと知る。9時25分、キシリアは中央指令室の総帥席に座るギレンに銃口を向け、父殺しの罪を咎めた。ギレンはそれを軽く笑い流そうとし、キシリアは兄を射殺する。

指令室の動揺は、トワニング准将の機転によって「ギレン総帥は名誉の戦死を遂げられた」という一言で収められ、指揮権はそのままキシリアに引き継がれた。出来事そのものは、数分から十数分程度のことだったといわれる。だが、ジオン軍の防衛を支えていたギレンの緻密な作戦指導が途切れたことは、すぐに防衛システムの混乱となって表れ、連邦軍に一瞬の隙を与えることになった。

キシリアがギレンを殺害したことにより防衛システムに申告な混乱が生じた。
画像引用元:『機動戦士ガンダム』 ©バンダイナムコフィルムワークス

9時40分、その隙を突いたNフィールドの連邦軍艦隊の反撃は熾烈を極めた。ギレンの精密な指示に依存していた空母ドロスは、前進態勢から一転して崩れ、撃沈される。10時10分、キシリアが采配を振るったものの、学徒兵のMSの動きの鈍さも重なって防衛線の立て直しは困難を極め、Sフィールドの空母ドロワも撃沈された。二隻の大型空母を失ったア・バオア・クーの防衛システムは、急速に力を失っていく。

同じ頃、ギレンの死がキシリアの手によるものだと悟ったエギーユ・デラーズ大佐の総帥親衛隊は、キシリアの指揮下に入ることを潔しとせず、再起を期して要塞からの離脱を図った。Sフィールドを強行突破しての撤退である。

11時00分 ― 要塞内部へ

11時00分、Sフィールドの連邦軍MS部隊が次々と要塞の外壁に取り付き、ホワイトベース隊を先頭に要塞内部への侵入を果たした。Nフィールドでも、連邦軍艦隊が母艦を失ったジオンのMSを駆逐しながら要塞周辺の宙域を制圧し、ジムとボールの群れが外壁へと押し寄せた。Sフィールドのジオングも、この頃にはガンダムとの相討ちで撃破されている。中央指令室のキシリアのもとには、NとSのフィールドの戦力が沈黙したという報告が届いた。

勝敗は決した。抗戦は不可能と悟った要塞守備隊の一部は、小惑星アクシズを目指して戦場からの離脱を始める。戦いは、侵入したMS部隊と、着岸した艦艇から突入した宇宙陸戦隊による要塞内部の乱戦へと移っていった。ホワイトベースもまた、この戦いで撃沈され、その役目を終えている。

12時05分、要塞の防衛に見切りをつけたキシリアは、ザンジバル級機動巡洋艦で脱出を図る。だが、反旗を翻したシャア・アズナブル大佐が放ったバズーカの一撃が艦橋を直撃し、キシリアは死亡した。直後、ザンジバルも連邦軍艦艇の集中砲火を受けて撃沈されている。こうして、ジオン公国を率いたザビ家の主要な人物は、すべてこの世を去った。

12時15分、要塞内のミサイル工場から火災が発生し、電力供給の停止と空調の停止によって、要塞は機能を失っていった。中央指令室から各艦艇へ、指揮系統の機能停止と自由行動を伝える命令が出されたのは、この頃と考えられている。事実上の停戦命令だったが、残存艦艇の多くがカスペン戦闘大隊の維持するEフィールドから突破・撤退を試みたため、連邦軍の攻撃はしばらく止まなかった。

同じ日の18時、ジオン公国のダルシア・バハロ首相は、生前のデギン公王から密かに託されていた依頼に従い、公国を共和制へ移行させ、サイド6を通じて地球連邦政府に終戦協定の締結を打診する。そして0080年1月1日15時、停戦が成立し、ア・バオア・クーの戦いは一年戦争の戦いとしての幕を下ろした。戦争全体の経緯については、「一年戦争 / One Year War」で詳しく扱っている。


内側から崩れた城 ― 要塞はなぜ陥ちたのか

ア・バオア・クー攻防戦を時系列で追うと、一つの事実が浮かび上がる。9時25分までの要塞は、陥ちる気配を見せていなかった。 ギレンの読みは当たり、空母ドロスは連邦艦隊を押し返し、Eフィールドではビグ・ラングが敵を退けていた。にもかかわらず、それからわずか2時間半でジオンの指導者は全滅し、要塞は陥落した。その間に起きたのは、外からの決定的な一撃ではなく、要塞の中心での銃声だった。

図8 ア・バオア・クー陥落の因果連鎖(筆者作成・筆者の解釈を含む)

崩壊の連鎖を分解すると、三つの層が見えてくる。

第一に、指揮系統が一人に集中していた。 ア・バオア・クーの防衛は、ギレンという一人の指揮官の「精密な指示」に強く依存していた。空母ドロスがギレンの死の直後に崩れたことは、その依存の深さを物語っている。別稿「ソーラ・システム」では、400万枚のミラーの照準と引き金が一隻のコントロール艦に集中していたことを、現代の用語でいう「単一障害点(Single Point of Failure)」として論じた。ア・バオア・クーもまた、多数のMSと二隻の空母を抱えながら、その頭脳は中央指令室のただ一つの席に集約されていた。そして、その一点を破壊したのは連邦軍ではなく、ジオン自身だった。

第二に、構造上の弱点が戦術上の依存を生んでいた。 要塞の接合部という弱点を、二隻の超大型空母で埋める。この設計は、空母が健在である限り強力に機能した。だが裏を返せば、空母を失った瞬間に弱点がそのまま露わになる構造でもある。ドロスとドロワが相次いで沈んだ後、防衛システムが「急速に」力を失ったのは、そのためと考えられる。

第三に、兵士の練度が崩壊を止める力を持たなかった。 指揮が乱れたとき、現場の部隊が自らの判断で戦線を支えられるかどうかは、兵士の経験に左右される。学徒兵が乗った最新鋭機は、整然とした指揮のもとでは数として機能しても、混乱の中で踏みとどまる力を欠いていた。一方の連邦軍は、ホワイトベース隊のように独自の判断で戦える歴戦の部隊を、Sフィールドの「本命」に集めていた。

そして、これら三つの層の根底にあったのは、ザビ家という一族の内部対立である。ギレンはデギンの和平工作を察知して父ごと連邦軍を焼き、キシリアは父を殺された復讐として兄を撃ち、シャアはザビ家への復讐としてキシリアを撃った。ア・バオア・クーは、地球連邦軍の砲火によってではなく、ジオン公国の権力構造そのものが抱えていた亀裂によって陥ちた城だった。 ジオン公国における権力闘争の系譜については、「陰謀と粛清のジオン公国」でも論じている。

コラム|小説版と『THE ORIGIN』が描いた「もう一つのア・バオア・クー」
ア・バオア・クーの戦いは、媒体によって大きく姿を変える。富野由悠季による小説版では、ギレンはサイド3のズム・シティで指揮を執り、要塞の最高指揮官は腹心のランドルフ・ワイゲルマン中将、キシリアは次席の指揮官とされる。連邦軍はソロモンを素通りしてア・バオア・クーを直接攻撃し、その作戦名はTV版でソロモン攻略戦の名だった「チェンバロ作戦」である。そしてギレンは、連邦軍とともに政敵キシリアも葬るため、コロニー・レーザーの射線を要塞そのものに向けさせた。この照射でレビルの艦隊とランドルフ以下の友軍が死亡し、要塞は機能を失う。要塞を壊したのはジオン自身の攻撃だったのだ。

安彦良和による漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、連邦側の指揮官をワッケイン少将が務め、キシリアはグラナダから空母ドロスを中核とする増援を率いて連邦艦隊を背後から叩く。戦局は実質的に互角だったが、残存戦力ではジオン側が上回っており、キシリアは連邦政府を降伏に追い込めると確信していた。しかし、ドロスへの着艦直前にシャアによって暗殺され、制御を失った乗艦(チベ級「パープル・ウィドウ」)がドロスに突っ込んで誘爆、ドロスは要塞上部に墜落して広い範囲を炎上させる。勝利を目前にしながら、指導者の死によって一転して敗れる。細部は異なっても、どの媒体でも要塞の命運を決めたのは、ジオン内部の裏切りだった。


語られなかったフィールド ― 外伝作品の中のア・バオア・クー

TV版と劇場版が描いたのは、主にホワイトベース隊が戦ったSフィールドと、ギレンとキシリアのいる中央指令室だった。だが、四つのフィールドのそれぞれで、別の戦いが続いていた。その空白を埋めてきたのが、のちの外伝作品である。

図9 作品ごとに描かれたア・バオア・クーの戦場(筆者作成)

Eフィールド ― 最後まで持ちこたえた戦線

3DCGアニメ『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』の最終話「雷鳴に魂は還る」は、本編ではほとんど触れられなかったEフィールドを舞台としている。新兵器の評価試験を任務とする第603技術試験隊は、ア・バオア・クーへの参集を命じられ、ヘルベルト・フォン・カスペン大佐の戦闘大隊に編入される。与えられたのは、駆逐モビルポッド「オッゴ」の実戦での評価試験だったが、それは実質的には実戦配備にほかならなかった。オッゴのパイロットとして着任したのは、実戦経験がほとんどない年少兵たちである。

この戦線を支えたのが、オリヴァー・マイ技術中尉が操る試作MAビグ・ラングだった。補給・整備機能を持つ巨大なユニットを結合したこの機体は、オッゴ部隊を支えながら連邦軍と渡り合う。Eフィールドは、戦闘の終結と残存艦隊の撤退完了まで戦線を維持できた唯一のフィールドだった、とする資料もある。そしてその戦いは、停戦が告げられた後も、すぐには止まなかった。本編が描いた「学徒兵の悲劇」を、名前と顔を持つ少年たちの物語として描き直したのが、このEフィールドの戦いだった。

Eフィールドを死守したカスペン隊のビグ・ラング
画像引用元:『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』 ©バンダイナムコフィルムワークス

Sフィールド ― 星の屑へと続く撤退

Sフィールドから強行突破で離脱したデラーズ大佐の親衛隊には、のちに「ソロモンの悪夢」と呼ばれるアナベル・ガトー少佐の姿もあった。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』は、このア・バオア・クーの戦いの記憶から物語を始めている。ギレンを撃ったキシリアの指揮を拒み、再起を誓って戦場を去った彼らは、3年後にデラーズ・フリートとして星の屑作戦を起こす。ア・バオア・クーの陥落は一年戦争の終わりであると同時に、宇宙世紀におけるジオン残党の戦いの始まりでもあった。

証言で描かれた戦場 ― 『光芒のア・バオア・クー』

漫画『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』は、ア・バオア・クーの戦いを、生還した兵士や関係者の証言をもとに描くドキュメンタリーという体裁をとったオムニバス作品である。作品全体が、作者オリジナルの組織FSS(Federation Survey Service)による調査報告という体裁をとっており、撤退するデラーズの親衛隊が進路上の学徒兵を含む兵士の救助を行っていたことなど、本編では語られなかった側面が描かれている。

興味深いのは、この作品が戦闘の時刻を本編とは異なる形で記録している点である。たとえばギレンの演説は9時00分、戦闘開始は13時20分、キシリアの死は23時20分とされているといい、本編の通説より大きく後ろにずれている。同じ戦いが、記録者によって異なる時刻で語られる。 それは現実の戦史でもしばしば起きることであり、ドキュメンタリーという体裁をとった作品らしいリアリティとも言えるだろう。

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ゼダンの門 ― ティターンズの要塞として

一年戦争が終わった後のア・バオア・クーについては、資料によって記述が分かれている。地球連邦軍あるいはジオン共和国の管理下に置かれ、コロニー建設用の鉱物資源衛星として使われたとする説もあれば、そのまま放置されていたとする説もある。いずれにせよ、戦後しばらくの間、この要塞が軍事の表舞台から姿を消していたことは確かである。

図10 ア・バオア・クーからゼダンの門へ ― 要塞の変遷(筆者作成)

その岩塊が再び要塞として甦るのは、宇宙世紀0087年である。地球連邦軍内部のエリート部隊ティターンズがこれを接収し、再要塞化を進めた。英語圏の資料には、0087年6月にジオン共和国からティターンズへ引き渡されたとするものもある。要塞には核パルス・エンジンが取り付けられ、6月8日、コロニーレーザーに改造されるグリプス2とともにルナツー宙域へ移動、「ゼダンの門」と改称された。こうしてゼダンの門は、ティターンズにとって宇宙における最大の拠点となる。

この名前を付けたのは、ティターンズの総帥ジャミトフ・ハイマンである。由来は、彼の祖先の出身地とされるフランスの町セダン(スダン)だ。セダンは、第二次世界大戦でドイツ軍がフランスへの突破口を開いた地であり、パリ侵攻へとつながる縁起の良い名前とされた。ちなみに「ゼダン」はドイツ語風の読みにあたる。『機動戦士Ζガンダム』の劇中でも、この要塞は当初「ア・バオア・クー」や「ガゼンの門」と呼ばれており、「ゼダンの門」の名が定着するのは第39話からである。

ジオンの最終防衛要塞が、ジオンを打ち負かした連邦軍の、それも最も強硬な一派の牙城になる。かつて地球連邦軍を迎え撃った要塞が、今度はスペースノイドを抑え込むための「門」として据え直されたのである。 グリプス戦役全体の構図については、「グリプス戦役 / Gryps Conflict」を参照されたい。


割れた傘 ― アクシズ衝突と終焉

ゼダンの門の最期は、宇宙世紀0088年1月18日に訪れる。グリプス戦役の終盤、ティターンズ、エゥーゴ、そしてハマーン・カーン率いるアクシズ(ネオ・ジオン)の三者が争う中で、ハマーンは小惑星アクシズそのものをゼダンの門へ激突させた。

図11 アクシズの激突とゼダンの門の分断(筆者作成・模式図)

衝突を受けたゼダンの門は、接合部から二つに分断され、壊滅状態に陥った。要塞に集結していた多くの兵力を失ったティターンズは、敵対するエゥーゴと拮抗するところまで戦力を落とすことになる。そしてアクシズの勢力は、その混乱の中でグリプス2の奪取へと動いていく。

ここで思い出したいのは、一年戦争の時点で指摘されていた要塞の弱点である。二つの小惑星をつないだ中央の接合部は、もともと構造的に最も脆い場所だった。ジオンはそこを二隻の空母で守り、連邦軍の攻撃をしのいだ。だが8年後、守る者もない宇宙空間で、小惑星の質量がそこを直撃した。一年戦争で戦術的な弱点だった接合部は、グリプス戦役で物理的な破断線となった。 要塞は、その生まれ持った構造のとおりに割れたのである。

コラム|要塞を割るのに必要なエネルギー

先のコラムで試算したように、ア・バオア・クーの脱出速度は秒速12〜13m程度にすぎない。これは、要塞が自分の重力でまとまっている力が極めて弱いことを意味する。天体を構成する物質を重力に逆らってばらばらに引き離すのに必要なエネルギー(重力的結合エネルギー)を、質量約1.2×10¹⁶kg、半径約10kmの一様な球として見積もると、およそ6×10¹⁷J(ジュール)になる。

アクシズの質量は資料によって定かではないが、仮にア・バオア・クーと同程度の質量を持つ岩塊が、秒速わずか10mで衝突したとしよう。その運動エネルギーは約6×10¹⁷J、TNT火薬に換算して約140メガトンに達する。人類史上最大の核実験であるソ連の「ツァーリ・ボンバ」(約50メガトン)のおよそ3倍であり、しかも要塞の重力的結合エネルギーとほぼ同じ桁である。

つまり、ゼダンの門にとっては、人が小走りする程度の速さでの衝突でさえ、自らの重力でまとまりを保てる限界に迫る衝撃だったことになる。しかも、そのエネルギーは要塞全体に均等に分散するわけではなく、最も強度の低い部分、すなわち人工の構造物でつながれた接合部に集中する。二つの岩塊が接合部で引き裂かれたという劇中の描写は、こうした物理的な性質とよく合致している。(数値は設定値を前提とした筆者の概算)

ゼダンの門の崩壊によって、かつてのア・バオア・クーは要塞としての歴史を終えた。一年戦争では人の手によって内側から崩れ、グリプス戦役では小惑星の質量によって外側から割られる。同じ岩塊が、二つの戦争で二度、異なるかたちで陥ちたのである。


塔の頂上に辿り着いた者はいない

勝利の塔の階段に眠る怪物は、登る者の後を追いながら、ほとんど頂上には届かない。その名を与えられた要塞の歴史を振り返ると、この伝承は予言めいて響く。

ジオン公国は、この要塞を本国を守る最後の砦とし、ギレンはここで連邦軍を迎え撃って戦争の行方を覆そうとした。その目論見は、9時25分の銃声とともに潰える。兄を撃って指揮を引き継いだキシリアは、要塞を捨てて脱出しようとしたところで、シャアの一撃に倒れた。そして8年後、この岩塊を「門」と呼び替えて宇宙の支配を目指したティターンズは、その門ごとアクシズに打ち砕かれた。ア・バオア・クーを足場にして頂上を目指した者たちは、誰一人として塔を登りきることができなかった。

ア・バオア・クーが教えてくれるのは、要塞の強さが岩盤の厚さや兵器の数だけで決まるものではない、ということだろう。多数のMSと二隻の空母、自前の工廠を備えた巨大な岩塊も、それを動かす指揮系統と、そこで戦う人間が崩れれば、驚くほど脆い。そして、どれほど堅固に見える構造物にも、生まれ持った弱点がある。宇宙世紀0079年最後の日に陥ちたこの要塞は、ガンダムという物語の中で、「堅牢さ」とは何かを最も鮮やかに問いかけた舞台だったと言えるのではないだろうか。


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ア・バオア・クー内部の決戦を再現するジオラマ。ガンプラは付属しません。

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参考文献

一次情報

  • テレビアニメ『機動戦士ガンダム』(日本サンライズ、1979〜1980年)第41話「光る宇宙」、第42話「宇宙要塞ア・バオア・クー」、第43話「脱出」
  • 劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(松竹配給、1982年)
  • OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(サンライズ、1991〜1992年)
  • 3DCGアニメ『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』(サンライズ、2006年)
  • テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』(日本サンライズ、1985〜1986年)
  • 小説:富野由悠季『機動戦士ガンダムII』(角川書店)
  • 小説:富野由悠季『機動戦士Ζガンダム 第4部 ザビ家再臨』(角川書店)
  • 漫画:安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(角川書店)
  • 漫画:Ark Performance『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』(角川書店、2010年)
  • 皆川ゆか『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』(講談社、2001年)
  • 『ENTERTAINMENT BIBLE』一年戦争編・グリプス戦争編(バンダイ、1989年)
  • J・L・ボルヘス、M・ゲレロ『幻獣辞典』(河出文庫)

二次情報

※二次情報は主にファン運営のWiki・百科事典サイトであり、検証不十分な情報や執筆者独自の解釈が混在する可能性があります。本稿では複数の情報源で一致した事項を優先して採用しました。なお、英語圏の一部サイト(MechaBay)には明白な誤記を含む記事があるため、同サイトのみに依拠する記述は採用していません。裏付けの取れなかった記述(要塞防衛に投入された艦艇数の具体値、学徒兵の動員数と犠牲率の具体値、ゼダンの門で生産されたとされる機種、名称を初期構想段階の設定に結び付ける説など)は採用を見送っています。戦闘の時刻はTV版・劇場版に基づく通説に拠り、『光芒のア・バオア・クー』の時刻設定は別途紹介しました。要塞の全高・直径は、ガンダムフロント東京に展示されたジオラマを1/7500スケールとして換算した値として英語圏の資料に記載された数値で、同ジオラマを1/3000スケールと報じた国内記事もあるため、確定値ではありません。時刻のうち0時00分・1時17分・翌15時、Eフィールドの戦力比6対1、トワニング准将の台詞の要旨、『光芒のア・バオア・クー』の時刻設定は、単一の資料でしか確認できなかったため「とされる」として記載しています。物理学的な検証(体積、質量、表面重力、脱出速度、結合エネルギー、衝突エネルギー)は設定値と仮定を前提とした筆者の概算であり、「内側から崩れた城」「塔の頂上に辿り着いた者はいない」といった評価は筆者の解釈です。

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